2月
アレクサンダー・テクニークは、欧米のジュリアード音楽院など有名な音楽学校で必ず教えられているメソッドで、「心と身体の緊張」を改善するのに大変効果的です!
最終回は、緊張を味方につける時には欠かせない神経についてのお話です。
皆さんは自律神経という言葉を聞いたことがありますか?ストレス対策などの記事に、よく出てくる言葉です。この自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2つがあります。交感神経は、昼間に働くアクティブ神経。副交感神経は、夜に働くリラックス神経。環境や時間帯に応じてどっちかが働いて、もう一方は休憩モードになります。この2つのバランスをうまく取ることが大切なのですが、緊張は、この交感神経が優位になっていることが原因。交感神経が優位になると、ドキドキして、心拍数が上がり、体温も上がり、筋肉は緊張するような状態になってしまいます。ちなみに、副交感神経が優位になると、この逆が起こります。適度な緊張状態、つまり緊張が味方になってくれる時は、自律神経も良いバランスが取れているのでしょう。
しかし!過剰な緊張状態は厄介です。交感神経が優位に立ちすぎてしまうと、例えば、身体が萎縮してしまい、手足が震え、頭の中が真っ白に……なんてことも。演奏中にこうなってしまうとパニックになってしまいますよね。過剰に緊張をする傾向がある人なら、普段から自律神経のバランスを取ることを心がけるのも対策の1つ。緊張しやすい人は、交感神経を優位にするのは得意と言えるので、副交感神経にも働いてもらう方法を身に付けると良いです。ここで、僕なりに考えた3つの方法を紹介します。
①「スマイル深呼吸」と「逆・深呼吸」!
2018年8月号と10月号の記事でもご紹介した呼吸法です。ポイントとしてはゆっくり時間をかけて行うこと。素早くやってしまうと、「ハーハー」と走った後のような呼吸になり、交感神経が優位になる可能性大!そして、吐く時にはスマイルも忘れずに。スマイルすること
でセロトニンという脳内物質も分泌されるので、緊張緩和には効果抜群です。
②1つ1つの動作を丁寧に!
本番前はできるだけ動作を丁寧にすることを心がけましょう。僕は荒く動いてしまいがちなので、特に注意しています。交感神経が優位になっている本番前だと、さらに荒くなってしまうので……。ゆっくり丁寧に行動すると、呼吸もゆっくり安定し、リラックスモードになりやすいので、緊張もやわらいできます。
③食事は、好きなものより腸に優しいものを選ぶ!
腸の働きは、副交感神経に影響します。緊張を落ち着かせて気持ちよく演奏を楽しむには、腸が気持ちよく動いてくれる食べものを選ぶとよいでしょう。どれが自分に合うか、ぜひ調べてみてください。時期によって変わるかもしれません。好きなものを食べてテンションあげる作戦も良いですが、交感神経が優位になるのだったら……?どちらを選ぶかはあなた次第です!
こうやって考えてみると、身体と気持ち(心)のバランスがいかに大事なのかが再認識できます。身体の使い方や考え方の選択肢を増やしていく中で、普段の生活習慣も見直すこともできますので、ぜひ取り入れてみてくださいね!
山口裕介 USK
ドラム奏者、アレクサンダー・テクニーク教師。「緊張を味方につけるセミナー」をメインにセミナーを全国展開。またオフィスワーク・日常の動作・コミュニケーション力を磨くアイデアなど、幅広いレッスンを行う。大手メジャーミュージシャンのパフォーマンスコーチも担当。
「緊張を味方につける」身体バランスLab:http://www.usk-drum.info/
2019 1月
1月
アレクサンダー・テクニークは、欧米のジュリアード音楽院など有名な音楽学校で必ず教えられているメソッドで、「心と身体の緊張」を改善するのに大変効果的です!
今回は、コミュニケーションの中で感じる緊張を緩和させるお話です。
日常生活やレッスンなどで、伝えたいことがうまく相手に伝わらなかったことや、期待と違う返事だったことはありませんか?どうにか理解してほしい、わかってほしいと思えば思うほど、説得するようにあの手この手で話をしてしまいがちですよね。説得しようとすればするほど、相手は説得されないように拒絶してしまうようです。これではコミュニケーションは成り立ちませんし、お互いに緊張してしまいます。
・生徒が本当に理解してくれているのかどうかわからない
・生徒を理解させるために『説得モード』になっている
レッスンをしていると、こんなことはありませんか?僕たち指導者は、しっかりと生徒さんの反応を見て話をしなければいけませんが、相手にわからせようと話している間はうまく伝わらないことが多いです。それにこのようなコミュニケーションの取り方だと、生徒さんは緊張をしてしまいますし、常に受け身になってしまい、自分で考えることをやめてしまいます。
レッスンの時だけではなく、日常会話や仕事でのコミュニケーションでも同じです。友達や職場での会話の中でも、「おかしいな?伝わらないな?」と感じた時は一旦ストップ!わかってもらおうとするのを保留します。わからせようとしているのであれば、それは自分中心のコミュニケーションになってしまっています。
僕は、レッスンの場なら「生徒さんが自分で考えて行動できるようになってもらう」、日常生活なら「お互いに楽しく安心して話せるようになる」が理想的であると考えています。これはお互いに気楽に過ごせる関係を保つ、一つの考え方だと思います。お互いに居心地の良い場を作りたいのであれば、自分だけでなく相手が居心地よく過ごせる環境を作ること!そこに意識を向けて行動すると、結果的に自分も居心地良い場になっていくはずです。
ステージ上での緊張との付き合い方は、人間同士のコミュニケーションと同じだと思います。本番の時には「下手に思われたらどうしよう?」「もしミスをしたらどうしよう?」などと考えがちですが、自分のことばかり考えてしまっているから不安になり、いつまでも緊張が続いてしまうのです。そんな時は、「本当は何をしたいのか?」「そのためにどうやって動けるようにするか?」と、自分の緊張に寄り添ってみてください。前号でもお伝えしましたが、目的に合わせた考え方をすることで、心も身体もスッと楽な状態にできます。緊張が緩和してくるはずですよ。
山口裕介 USK
ドラム奏者、アレクサンダー・テクニーク教師。「緊張を味方につけるセミナー」をメインにセミナーを全国展開。またオフィスワーク・日常の動作・コミュニケーション力を磨くアイデアなど、幅広いレッスンを行う。大手メジャーミュージシャンのパフォーマンスコーチも担当。
「緊張を味方につける」身体バランスLab:http://www.usk-drum.info/
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