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11月
ウダーの新しいインターフェースとして、さまざまな可能性を探りましたが、一旦完全に手詰まりの状態となってしまいました。どのような方法を考えても、何かしら欠点があるのです。それは、「演奏性が低い」「組み立てることができない」「検査方法が複雑になる」などなど……。そのような状況で次なる問題が持ち上がりました。ウダーは電子楽器ですから、何かしらの出力が必要となります。アンプ・スピーカーを内蔵しますが、外部アンプにつなぐための、あるいはイヤホンをつなぐための出力が必要です。本家のウダーでは、その部分に電話線ケーブルを使用して、本体真ん中から出していました。宇田さんは、これで演奏していましたが、ケーブルが邪魔だと思うことも多々ありました。さらに、本家では自家製アンプにつなぐため接続を自由に設計でき、電話線でも可能でしたが、汎用性を高めるためには、標準ジャックか標準ミニジャックが必要です。
当初は本家と同じように、本体真ん中にジャックをつける設計を行なっていましたが、試作を演奏すると、邪魔でしょうがありません。初心者は演奏方法もままならないため、下手をするとケーブルが本体に巻き付いてしまいます。そこで、ジャックを左右の持ち手のどちらかに埋め込むことにしました。しかしながら、ウダーの筐体は、すでに回路基板が目一杯の状態ですので、スペースに余裕がありません。ほんの少し基板の位置を移動し、最小限のスペースを生み出すことで、どうにかこうにか乗り切ることができました。
(つづく)
10月
前回は、ウダーのセンサー方式について説明しました。宇田さんの手製ウダーでは、センサーの上に導電ゴムが巻かれて、それが演奏時のインターフェースとなっています。センシングの方式を変えたことで、インターフェース部も別なしくみが必要になりました。第2の壁は、まさにこの部分でした。形状と材質、両面から検討していきます。静電容量方式のセンサーでは、インターフェース部に空気の層が必要となります。指とセンサーの距離によって、音が鳴ったり鳴らなかったりするからです。最初に中空のチューブを巻くことを考えました。しかし、チューブを巻くためには、その位置決めをしなければいけませんし、固定方法を考えなければいけません。実際に指で押さえつける部分なので、耐久性も要求されます。
最初に上がった材質候補はシリコンゴムでした。手触りもよく、柔らかさも理想的なのですが、シリコンゴムには決定的な欠点がありました。それは、接着できないということです。これでは、固定することができません。そこで、次に考えたのが、筒状の形状の表面にチューブの空洞を模した凸凹をつけるという方法です。これをシリコンで作って、センサー部にかぶせれば、インターフェースができ上がります。第2関門突破!と思えましたが、円筒にチューブを螺旋に巻いた形状をシリコンでは成型できないということがわかりました。1歩後退です。
(つづく)
9月
謎の電子楽器ウダーを商品化するにあたって、乗り越えなければならない壁は想像以上にたくさんあります。最初の壁は、センサーをどうするかということでした。センサーは、演奏する指が触れる部分に仕込まれていて、オリジナルのウダーでは導電ゴムと電極によるセンサーが用いられています。導電ゴムを押し込んだ位置を認識し、さらに押し込んだ指を動かすと音程がシームレスに変わる、これを実現するために、使われているセンサーの数は384 個(半音につき4 個のセンサー)。とてつもない数です。導電ゴムも無数のセンサーいずれもそのまま商品化すれば、とても高額になってしまいます。
そこで作者の宇田さんが考えたのが、静電容量式のセンサーでした。スマートフォンなどのタッチパネルに使われているのが、静電容量センサーで、指が近づくと変化する静電容量を読み取って、音程を変化させます。さらに、電極も形状を工夫することで、数を48 個まで減らすことができました。ウダーの操作性を決めるセンサー部分ですから、方式が変わって演奏感が低下しては意味がありません。静電容量式に合ったプログラムを作ることで、オリジナルとは違う方式ながら、ウダーとしての特徴を損なうことのないセンサーの実現に成功しました。
(つづく)
8月
これまで謎の電子楽器ウダーの仕組みや外観について、いろいろと説明してきましたが、肝心の音の話をしていません。ウダーから一体どんな音が鳴るのか、電子楽器というからには強烈な電子音なのか、今回はウダーの音の話です。オリジナルのウダーは、正確に言えば、MIDIコントローラです。ウダー本体はMIDI音源とつながっていて、出そうと思えばどんな音でも出せる、それがウダーでした。しかし、開発者の宇田氏の頭にあったのは、「シンプルな楽器ウダーには、シンプルな音を使いたい」ということでした。
そこで選んだのが“オカリナ”の音です。ほとんどサイン波に近い、その音は彼のお気に入りで、どこで演奏するにもその音を使っていたため、いつしかウダーの音色として定着しました。しかしながら、最終的にはウダー専用の音源を開発したいというのが、彼の願いです。そこで、現在のウダーはオリジナルの音源回路も持っています。音源をソフトウエアとして構築しているため、ほかの機能と独立に音色だけを追い求めるわけにはいきませんが、徐々に彼の思う音に近づいてきています。「ウダーの音」は、いまだ発展途上です。
(つづく)
7月
これまでに見たこともないインターフェースを持つ楽器、ウダーのしくみについて、前回はらせんに巻かれたチューブの話をしました。チューブは左右が線対称になっており、いずれも筒の外側ほど高い音、内側ほど低い音になっています。実はこんな楽器も珍しいのです。鍵盤であれば、左から右へと音階が上がっていく流れに両手をおきます。弦楽器は、左右の手が違う役割を持ちます。管楽器も左右の手でひとつの作業を分担します。しかし、ウダーは両手の役割がまったく同じです。その結果、どのような演奏法も可能なのです。
左右の手で伴奏とメロディーに分けてもよいし、メロディーを両手で弾いてもよい、はたまた伴奏とメロディーを一体化した譜面を指の動かしやすさ優先でミックスして弾いてもよいのです。自由度が高すぎることは、得てして“不便”につながる場合がありますが、楽器は「音楽を奏でること」が目的ですから、すべては演奏家の手に委ねられます。その中から“○○流”みたいなものも生まれるはずです。ちなみに、現状は宇田流しかありません、はい。(つづく)
6月
ウダーとはどんな楽器なのか、何せ皆さんは見たこともないわけですから、文字でわかっていただくのは、とても難しいと思います。では、ウダーの姿を想像してみてください。まず、ウダーは丸い筒を両手で鷲づかみにして演奏します。鷲づかみにしたその指先には筒の周囲にらせん上に巻かれた直径5ミリのチューブがあります。このチューブが演奏のためのインターフェースです。
チューブを押さえると、音が鳴ります。チューブが巻かれた筒は厳密には12角になっています。チューブは12の区画ごとに1周していて、この12区画は「ド」から「シ」までの半音ごとの音階になっています。らせんチューブを指で1周なぞると、最初の音の1列隣りに指があり、音はちょうど1オクターブ上の音になってるというわけです。チューブは4周巻かれているので、音域は4オクターブになります。(つづく)
5月
皆さん、ウダーという楽器をご存知ですか? 宇田道信氏が作ったまったく新しい電子楽器です。学生時代にギターを弾いていた彼は、あるとき新たな楽器を弾いてみたいと思いました。しかし、既存のどの楽器もいまひとつ。ならば「作ってしまえ」と。これが、演奏を聴いた誰もが魅了される楽器・ウダー誕生のきっかけです。
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