「……うーん」
もう一度中央広場を抜け、東に向かう道の途中で、レンは腕組みをしました。
「どうしたのよ?」
ツアーの旗を振るトリシアが、その顔をのぞき込みます。
「ここまで、何にも事件が起きてないし、被害も出ていない。おかしい」
「いや、出てるだろ、この僕に被害! じゅうぶん事件だろ!」
先頭のショーンが振り返り、自分を指さしました。
「……と……言ってる……割に……この……ツアーに……ついて……来てる……」
アーエスはノラ犬を相手にするように、手のひらをしっしと振って追い返そうとします。
「当たり前だ! 僕のいないところで陰口をたたかれてはたまらないからな! 絶対に僕はこのツアーから離れないぞ!」
ショーンは宣言しました。
「陰口なんてたたかないって、ショーンじゃあるまいし」
「陰口なんてたたかないわよ、ショーンじゃないんだから」
レンとトリシアが声をそろえます。
「今のは陰口じゃないのかああああ!」
「目の前だから」
「そう、目の前だから」
と、またまたレンとトリシア。
「……お二人さん……息が……ピッタリ……」
アーエスが指摘します。
「そ、そんなこと!」
「ないない、全然ない!」
二人は慌てて顔をそむけました。