店を出て、北に向かって歩き出したところで。
「きゃーん! レン先輩とその他大勢ーっ!」
聞き慣れた声が、みんなの背中の方から聞こえてきました。
「げっ……この声は」
トリシアが鼻の頭にしわを寄せます。
声の主??もちろんベルのことです??は、ものすごい速さで走り寄ってくると、レンの腕にしがみつきました。
「レン先輩!」
「だーっ! 毎回毎回くっつくんじゃないの!」
トリシアは、二人の間に強引に割り込みます。
「ちょっと、トリシア! レン先輩と東街区に来るなら、どうしてあたしに声かけないのよ! 私だけ仲間はずれなんて、絶対に許さないわよ!」
ベルはトリシアに向かってベーッと舌を出すと、みんなを見て首をかしげました。
「で、なんなの、この集まり?」
「実はさ」
レンが今日、何回目かの説明をくり返します。
「観光ツアーの案内? 面白そう!?」
話を聞いたベルは、レンの腕にしがみついたまま、瞳を輝かせました。
「このあたりは任せて! あたしはここで生まれ育ったんだから! あたしが前に通ってた名門アリエノール学園も、この西街区にあるし!」
「……退学になったくせに」
ボソリとつぶやくショーン。
「何か言った?」
耳がいいベルは、ショーンをにらみます。
「い、いや、知らんぞ?」
とぼけるショーンはレンの陰に身を隠しました。
「……大きな……声で……言うだけの……勇気がない」
アーエスが肩をすくめます。
「放っとけ!」
「じゃあ、どっから案内しよっかなあー」
ベルは頼まれもしないのに、トリシアから旗を引ったくり、みんなの先頭に立ちました。
「ちょっと! わたしの旗!」
トリシアは旗を奪い返そうとしますが……。
「まあまあ、ここはベルに任せたら? 西街区はショーンに任せたんだし」
と、レンがトリシアを止めました。
「レン! ベルの味方する訳!?」
「いや、味方とかそういうことじゃ……」
「へー、じゃあ何!?」
「だからさ!」
「……みなさん……これが……アムリオン名物……痴話……喧嘩……その二……」
アーエスがまたも解説を入れます。
「「だから違う!」」
二人の息は、またまたピッタリ合いました。