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この日。
たまたまこの「三本足のアライグマ」亭で、ミノタウルスの女の子ミノンと、その友だちで髪が蛇になっているメデューサがおしゃべりをしていた。
「はあ~」
「どうしたの?」
深くため息をつくミノンに、メデューサがたずねる。
「愛しいショーン君とのデート代が足りないんです」
ミノンはまたひとつため息を重ね、レモンのタルトにかぶりついた。
「ショーン君、デートしてくれることになったんですか?」
メデューサは驚く。
ミノンがショーンに恋をしているのは知っていたけれど、ミノンがいくら誘ってもショーンは逃げてばかり。
デーとしてくれるようになったとは初耳だった。
「お金が貯まってから誘うんですよ」
ミノンは答える。やっぱり、ショーンは逃げ回っているようだ。
「……手っとり早く、お金がほしいです」
ミノンは、お金を貸して欲しそうな目をメデューサに向けた。
「私も今月、きびしくって」
メデューサは顔を伏せる。
頭の蛇たちも、いっしょに視線をそらす。
と、その時。
「あんたら! ほんとうに次、ヘマしたらクビだからね、クビ!」
カウンターの方から、セルマが怒鳴る声が聞こえてきた。
怒られているのは、いつもの3人。
アーリンとフィリイ、そしてフロイラインである。
「あの連中が働けるなら――」
「私たちだって」
ミノンとメデューサは顔を見合わせた。