(写真提供:学研・写真資料センター)
今年も師走と共に冬将軍が到来しました。異常とも思える急激な大雪で被害に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げます。このところ、一年があっという間に過ぎていくような気がしてなりません。ただ、慌ただしい日々を過ごしてはいても、なんとか家族そろって健康でよい一年の締めくくりにしたいものだと思います。
私の幼いころの思い出で、この時期に必ず思い起こすものに「大掃除」があります。父が一家の総大将として一日がかりの大掃除を指揮します。たいそう働かされましたが、小学生の私がとりわけ楽しかったのは、張り替える前の障子紙を思う存分破ることでした。日頃は、障子に穴を開けては叱られてばかりでしたから本当に気分爽快でした。障子は紙を破ってから洗い、そして外で乾かし夕方張り替えました。白くピンと張られた障子を見て清々しい気分になったことをよく覚えています。
畳をたたいて天日で干したり、ガラスや廊下を磨いたり、自分の机を整えたり、遊び半分、仕事半分、親と兄弟で心と力を合わせての大がかりな協働作業は一年のうちでもこの機会だけだったように思います。その夜は、ご褒美の鍋料理だったような記憶があります。温かな鍋を囲みながら、これから迎える新年への期待感も膨らんでいたのでしょう。
「一年の計は元旦にあり」、私の好きな言葉です。昨年はうまくいかなかったとしても、それは昨日までのこと、今日から新しい一年が始まるぞと思えました。特に、子どもたちには新たな目標を立て、そして新鮮な気持ちで未来に思いを馳せてほしいと願っています。
毎年、初詣に参りますと、親御さんとともに子どもたちが真剣に手を合わせ祈る姿を目にします。その願いは「家族の幸せや健康」であったり「勉強や受験」あるいは「友達関係や部活動」であったり、さまざまでしょう。今年も、あるいは今年こそはと、子どもたちの願いが叶うように励ましてあげたい、応援してあげたい気持ちでいっぱいになります。
暮れからお正月の時期は、一年のうちで最も家族がそろって過ごせるのではないでしょうか。日頃、家族一緒にゆったりとした時間を過ごすことはなかなか叶いません。ゆっくりおせち料理を食べたり、トランプやゲームに興じたりなど、お正月は心が和んできます。そんな一家団欒の温もりは、子どもたちへの大きなお年玉の一つに違いないと思います。
「スローライフ」という言葉があります。現代のように変化が激しく慌ただしい社会は、家族一人ひとりを忙しくさせ、かつ家族を引き離しているように感じます。本来、人々が求めている、あるいは憧れている生き方は、スローライフ(ゆっくり、ゆったり、楽しく健康に、一緒に生きる)ではないかと思っています。
子どもは親や家族がニコニコしているのが大好きです。いつも家族が一緒にいることで、とても幸せな気分にもなります。また、家族そろって遊んだり、お出かけしたり、さまざまな楽しい出来事は、子ども時代のよい思い出になるでしょうし、その後の生きる意味や判断基準、規範意識の醸成に大きな影響を与えます。子どもは、よりよい家庭環境、社会環境を通して自我が芽生え、やがて自立していきます。
そこで、今年のご家庭での元旦の計に「一家団欒」を加えてみてはいかがでしょうか。以前、日本の家庭では家族そろって食卓を囲むことは当たり前のことでした。家族がそろうことが難しい現代社会だからこそ「一家団欒」は大変価値あることだと思います。
今年の流行語大賞は「ダメよ~ ダメダメ」「集団的自衛権」だそうですが、来年は「一家団欒」などの言葉が選ばれるといいなと思います。日本中にこの言葉が流行するとき、きっと幸せな子どもが増えるとともに、一家団欒の力を得た子どもたちは、未来の自分に夢と希望と勇気を持って、目標に向かって全力で突き進んでいくことでしょう。