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小学生白書30年史(1989~2019年)

【調査テーマ】「小学生の学習・日常の30年を振り返る」

第1部 小学生の学習・学習環境の変遷
1. 学び
(4)読書
★1日1時間以上読書している子どもの割合は上昇傾向。特に女子に長時間読書傾向あり

『小学生白書』では、『1~6年の学習』『1~6年の科学』の読者を対象に「1日あたりの読書時間」「読書嗜好(本を読むのがどれくらい好きか)」「1か月あたりの読書量(冊数)」を2006年まで調査してきた。その後休止期間を経て、2014年以降は「1か月あたりの読書量(冊数)」のみ、人口比率を考慮して日本全国から無作為抽出した小学1~6年生を対象に調査している。読書時間・読書嗜好の後継として読書量があるととらえ、本章ではこの3つの調査結果分析をまとめて掲載する。

①1日の読書時間

表1-1-(4)- ①-a 1日あたりの読書時間(男女総合:1997~2005年)

 

  • (注1)調査は単数回答形式で実施
  • (注2)調査には1997年から2000年までは保護者が回答、2001年から2005年までは本人が回答
  • (注3)2001年に「15分以内」が選択肢から外され、新たな選択肢「1時間30分以内」「2時間30分以内」が加わっている

図1-1-(4)-①- b 1日の読書時間の変遷(男女総合:1997~2005年)

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  • (注1)調査は単数回答形式で実施
  • (注2)調査には1997年から2000年までは保護者が代理回答、2001年から2005年までは本人が回答
  • (注3)2001年に「15分以内」が選択肢から外され、新たな選択肢「1時間30分以内」「2時間30分以内」が加わっている

表1-1-(4)-①-aは、小学1~6年生の1日あたりの読書時間の変遷を記している。また図1-1-(4)-①-bは、小学1~6年生の1日あたりの読書時間の変遷を、選択肢の増減の影響に左右されないよう、視覚的に表現している。

2001年を境に回答者が保護者から本人に変わり、選択肢の増減があったものの、1997年から2005年の8回の調査を通して、読書時間「30分以内」が6割超を占めていることがわかる。読書時間が30分以上1時間以内の児童も毎年2割前後と、一定の割合で推移している。小学生全体の読書時間の推移で特徴的なのは、0分と回答した「読書しない」児童の割合である。回答者が保護者から本人に変わった2001年以降、これまで2%台だったのが、3~5%台に増加している。一方、1日1時間以上読書している児童の割合は上昇傾向にあり、「1時間30分以内」「2時間以内」「2時間30分以内」「3時間以内」「それ以上」の合計は毎年12~16%台で推移している。

表1-1-(4)- ①-c 1日あたりの読書時間(男女別:1997~2005年)

  • (注1)調査は単数回答形式で実施
  • (注2)調査には1997年から2000年までは保護者が回答、2001年から2005年までは本人が回答
  • (注3)2001年に「15分以内」が選択肢から外され、新たな選択肢「1時間30分以内」「2時間30分以内」が加わっている

小学生の1日あたりの読書時間を男女別に整理しているのが、表1-1-(4)-①-cである。この表では、各回答中、男子の割合が女子を上回る箇所を水色、女子の割合が男子を上回る箇所をピンクで塗り分けた。その結果、小学生の1日あたりの読書時間に次の傾向があることが判明した。

まず指摘できるのは、男子に比べて女子の方が長時間読書する傾向があるということである。これは、長時間の読書を示す表の下方に行くほど、表のピンクに塗られた箇所が圧倒的に多いことからうかがえる。この傾向は、保護者が回答した2000年以前に特に顕著に出ており、1日15分以上読書している児童の割合において、女子が全て多数となっている。本人回答となった2001年以降は、「30分以内」読書している割合は全て男子が多いという結果が出たが、1時間以上読書している割合は依然として女子の方が多数を占めている。

②本を読むのが好きか 
~読書好きの児童がいずれの年も2/3超。特に女子に読書好き傾向あり~

表1-1-(4)- ②-a 読書嗜好(男女総合:1997~2005年)

 

  • (注1)調査は単数回答形式で実施
  • (注2)調査には1997年から2000年までは保護者が回答、2001年から2005年までは本人が回答

図1-1-(4)- ②-b 読書嗜好(男女総合:1997~2005年)

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  • (注1)調査は単数回答形式で実施
  • (注2)調査には1997年から2000年までは保護者が回答、2001年から2005年までは本人が回答

表1-1-(4)-②-aは、小学1~6年生における読書嗜好(本を読むのがどれくらい好きか)の変遷を表している。また図1-1-(4)-②-bは、小学1~6年生の1日あたりの読書時間の推移を、視覚的に表現したものである。

特徴としてまず指摘できるのは、読書が「とても好き」という回答の多さである。2003年の48.7%を頂点に全ての年で4割を超える児童が「とても好き」と回答している。「わりと好き」という回答も多く、最も低い1997年でも24.9%、その後は25%超の年が続き、2005年には29.7%が回答している。「とても好き」「わりと好き」を合わせた「読書好き」な児童は、いずれの年でも全体の3分の2を超え、本人回答となった2001年以降は、「読書好き」が70%超を維持している。

一方、「あまり好きでない」「きらい」を合わせた「読書嫌い」児童は毎年4~7%弱と少数で数値の変動幅も少ない。「ふつう」と回答した児童の割合は、保護者回答だった2000年以前は毎年25%前後だったが、本人回答となった2001年以降は20%前後に収まっている。数値の推移を追っていくと、2000年以前「ふつう」と回答した児童が、2001年以降「わりと好き」に変わったようである。1997年から2005年の『小学生白書』のアンケート回答者(『1~6年の学習』『1~6年の科学』の読者)は、総じて「読書好き」の傾向が高かったようだ。

表1-1-(4)- ②-c  本を読むのが好きか(男女別:1997~2006年)

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  • (注1)調査は単数回答形式で実施
  • (注2)調査には1997年から2000年までは保護者が回答、2001年から2006年までは本人が回答

小学生の読書嗜好の男女差の傾向とその推移を示しているのが、表1-1-(4)-②-cである。この表では、各回答中、男子の割合が女子を上回った箇所を水色、女子の割合が男子を上回った箇所をピンクで塗り分けた。結果、小学生の読書嗜好においては、女子に顕著な傾向があることが判明した。すなわち、読書が「とても好き」な女子が、男子と比較して顕著に多いということである。「とても好き」と回答した割合を見ていくと、9回の調査全てで女子が男子を10~20ポイントと大幅に上回っている。一方、「わりと好き」「ふつう」「あまり好きではない」「きらい」においては、ほとんどの場合で男子が女子を上回っており、このことからも、男子と比較して女子の方が読書を好む傾向がうかがえる。

③ 1か月の読書量(冊数)
★2010年代、男女ともに読書量が急減

図1-1-(4)-③-a  1か月の読書量(冊数)(1999~2019年)

 

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  • (注1)2001年から2006年までは小学生本人が回答、2014年以降は保護者が代理で回答
  • (注2)図中の灰色線は男女平均、青線は男子平均、赤線は女子平均の読書量(冊数)を表している
  • (注3)読書量についての調査は1989年(全体平均9.1冊/月)にも行ったが、それ以降1999年まで同調査を行わなかったため、グラフには掲載していない。1989年調査結果についてはこちら

図1-1-(4)-③-aは、小学1~6年生における1か月の読書量(冊数)の変遷を表している。1か月の読書量については、1999~2006年までに8回、2014~2019年までに6回調査を実施しているため、小学生の近年の読書傾向も把握可能である。

小学生全体の傾向を捉えるため、男女平均の読書量を追っていくと、1999年の10.1冊から2000年の7.3冊に急減した後、2000年代は徐々に読書量が増え、2006年には8.6冊まで回復している。表1-1-(4)-②-aや図1-1-(4)-②-bの読書嗜好で示されたように、読書人気の高さがこの回復からうかがえる。ところが、調査休止期間の後、2014年には5.6冊と急減している。ただしこれは、調査対象者が2006年までの『1~6年の学習』『1~6年の科学』の読者から、2013年以降に人口比率を考慮して日本全国から無作為抽出した小学1~6年生に変わったことが影響していると考えられる。その後、2016年には4.3冊まで減り、2018年には5.0冊まで回復したが、2019年には3.1冊と歴代最低冊数に急減した。所々上下動があるものの、2014年以降の読書量の減少が顕著である。

男女別の読書量の推移をみると、読書量に男女差があることが指摘できる。「1日あたりの読書時間」「読書嗜好」調査結果と同様、読書量でも女子が男子を上回っている。男女差は、2000年代は最大1.3冊(2005年)で平均して1.0冊前後であったものが、2014年以降は最大2.6冊(2018年)で平均2.0冊前後に拡大している。ただし、2019年は女子の読書量も6.3冊から3.4冊に急減し、男子も2.8冊と過去最低を記録し、男女平均も5.0冊から3.1冊と急減する結果となった。

小学生白書Web版 2020年8月調査