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TOP > 白書シリーズWeb版 > 小学生白書 > 30年史(1989~2019年)
『小学生白書』では、小学生が将来つきたい職業についてのアンケート調査を実施してきた。ここでは、その中から各年の人気上位5つを抽出し、その時々の小学生に人気の職業の変遷を辿ってみたい。なお、小学生が将来つきたい職業については男女別の特徴が顕著にみられることから、まず男女別の変遷を振り返り、その後男女総合の変遷をみていくこととする。
表2-2-(1)-a 将来つきたい職業(男女別:1995~2019年)
●男子
表2-2-(1)-a(男子)は、小学1~6年生男子の将来つきたい職業(上位5位)の変遷を示している。
1995~2010年代に行われた20回の調査において、男子は「プロ野球選手」「プロサッカー選手」が継続的に人気5位圏内に入っていることが大きな特徴である。「プロ野球選手」「プロサッカー選手」の人気は、調査期間を通して双方または一方が上位1~3位圏内に入っていることや、近年人気が低落傾向にあるものの2014年・2015年・2018年の「プロ野球選手」を除いた全ての調査年でそれぞれ5~10%超に至る支持を得ていることからもうかがえる。
その他、男子の特徴として挙げられるのは2015年まで13回の調査でランクインする「ゲームデザイナー」の人気であろう。第2部.1.「(4)通信機器の保有率」 で紹介したように、男子のゲーム機の保有率の高さは、この職業が人気になる一つの要因であることが推察される。
その他、2000年代を特徴付けるのが、「教授・研究者・学者」である。2001年に突如人気4位に登場し、2002~2005年まで連続して3位、2006年には「プロ野球選手」「プロサッカー選手」を抑えて1位となっている。この背景として、2000年に白川英樹氏(ノーベル化学賞)、2001年に野依良治氏(ノーベル化学賞)、2002年に小柴昌俊氏(ノーベル物理学賞)と田中耕一氏(ノーベル化学賞)と、2000年代初頭に日本人研究者のノーベル賞受賞ラッシュがあったことが挙げられるだろう。また、この頃の調査対象であった『1~6年の学習』『1~6年の科学』の読者の嗜好が強く影響した可能性もある。
2017年以降人気が高いのは「YouTuberなどのネット配信者」である。2017年・2018年に連続2位となり、2019年にはついに1位となった。スマートフォンやタブレットなどの普及もあってか、小学生のインターネット動画視聴が増えていることの影響が推測できる。
総じて、男子が女子と大きく異なる点は、女子は商店経営や保育士、パティシエ、看護師など、身近な日常で働いている姿が見える存在に影響を受ける傾向が強いのに比べ、男子は身近に接する分野で注目を集めている人・人気者に憧れる傾向が強いと考えられる。
表2-2-(1)-a 将来つきたい職業(男女別:1995~2019年)
●女子
表2-2-(1)-a(女子)は、小学1~6年生女子の将来つきたい職業上位5位の変遷を示している。
1995~2010年代に行われた20回の調査において、女子は人気な職業の顔ぶれが大きく変わらない点に特徴がある。すなわち、「ケーキ屋さん(パティシエ)」や「保育士(幼稚園の先生)」「まんが家(イラストレーター)」などにその特徴がみられ、順位の入れ替わりはあるものの、男子のように特定の職業が一定期間のみ人気急上昇するなどという現象はみられない。とくに近年の「パティシエ」人気は高く、2001年以降は2006年を除き、全ての年で1位についている。支持率も高く、「パティシエ」が概ね7~10%、「ケーキ屋さん」「パン屋さん」など近い業態の職業を含むと15%前後から20%超の人気を博す年(2015年・2016年など)も存在する。
女子の将来つきたい職業については、2~5位を、「保育士(幼稚園の先生)」「看護師」「教師(小・中・高の先生)」、「まんが家(イラストレーター)」で分け合っている構造となっている。1996年から2000年にかけて人気の高い「商店経営」も含め、どの職業も小学生が比較的身近に接している職業であることが特徴的だ。1990年代は、「保育士(幼稚園の先生)」の人気が徐々に低下する反面、「看護師」と「まんが家(イラストレーター)」の人気が徐々に高まる傾向にある。
2000年代前半に入ると、「教師(小・中・高の先生)」と「医師」のランクインが目立つようになる。特に「医師」は、2004年・2005年と連続して2位となり、2006年には僅差であるが「パテシィエ(ケーキ屋さん)」を追い抜くほどの人気となっている。
2010年代の特徴は、「看護師」と「保育士(幼稚園の先生)」の復活である。2006年には5位圏内から消えていたこれらの職業が、2010年・2013年に5位圏内に復帰、「看護師」は2017年・2018年と連続2位で2019年には3位、「保育士(幼稚園の先生)」は2018年に2位・2019年に3位と、近年は「パティシエ(ケーキ屋さん)」に次ぐ人気を博している。
総じて、女子が男子と大きく異なる点は、男子は身近な分野で成功している人・人気者に憧れる傾向が強いのに比べ、女子は商店経営や保育士、パティシエ、看護師など、身近な日常で働いている姿が見える存在に影響を受ける傾向が強いと考えられる。
表2-2-(1)-b 将来つきたい職業(男女総合:1997~2019年)
表2-2-(1)-bは、男女を総合した小学1~6年生の将来つきたい職業(上位5位)の変遷である。「パティシエ(ケーキ屋さん)」「プロ野球選手」「プロサッカー選手」など、男女それぞれにおいて圧倒的な人気を誇る職業が1位・2位を占める傾向にある。上記以外では、1990年代から2000年代半ばにかけては、「まんが家(イラストレーター)や「教師(小・中・高の先生)」といった女子から一定の人気を博している職業が多くランクインしていることが分かる。
男女共に人気の高い職業は、2003年以降ほぼ5位圏内に入っている「医師」であろう。男子・女子個別の順位の推移では1位・2位といった目立った順位を連続して獲得するほどの人気はないものの、2014年以降3~5位に安定的にランクインしていることから、男女双方で安定的な人気を獲得しているといえる。
※備考として、弊所の調査では小学生の「将来つきたい職業」と日経平均年次終値および完全失業率を指標として経済状況の推移とは、とくに相関がみられないことがわかっている。