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図A-8 震災時、保護者は学校と子どもの状況を把握できていたか
緊急連絡網が「役に立たなかった」と回答する保護者が多かったという回答を裏付けるように、6割以上の保護者は「学校の被災状況が分からなかった」と回答している。また、やはり6割以上の保護者が、子どもがどのような方法で下校するのかについても「分からなかった」と回答している。学校の被災状況については、学校によほど隣接した地域にいなければ実際の状況などは把握することは難しいかもしれない。万が一校舎に甚大な被害が出れば、通信手段すら確保できない状況に陥る可能性もある。ただ、今回の規模の震災で関東圏であっても、学校の被災状況を保護者が把握することには相当程度の困難が伴うということを窺い知ることはできよう。震災時における適切な避難誘導と子どもの保護を検討していく上で、より実効性の高い緊急連絡網の構築とともに、保護者への情報提供のあり方も検討する必要があるだろう。
一方で、子どもの下校方法について分からなかったと回答した保護者が6割以上いることについては、災害時における児童の避難方法についての対策の周知が求められるのではないだろうか。それは保護者が日中自宅にいるかどうかの別を問わず、求められることと思われる。特に複数の保護者が自宅とは離れた場所で仕事をしている場合や、学校と自宅が離れている場合などは、下校方法のあり方で保護者の行動も左右されることが十分に考えられる。
(桐蔭横浜大学准教授:角替弘規)
図A-9. 震災時、保護者は子どもを確保できていたか
震災が起きた時に、保護者が最も関心を払うのは、自分の子どもの安否と所在であろう。先の質問で見た通り、学校の被災状況と子どもの下校方法については分からないと答える保護者が6割以上存在したが、「子どもがどこにいるか分からなかった」と答えた保護者は3割強にとどまっている。また、「子どもをひとりにしてしまうことがあった」と答えた保護者は約1/4であった。これらのことは、震災が起きた時間や曜日、子どもの学年や通学経路、放課後の過ごし方によっても大きく変わることであるため、ここで示された回答結果をもって「多い」「少ない」や「善し」「悪し」を判断することは難しい。金曜日の午後3時前という状況の中で、3割の保護者が子どもの所在を把握できず、1/4の保護者が子どもを1人にしてしまったという状況をどう考えるか、保護者と学校それぞれの立場で検討する必要があるだろう。例えば学校はすべての保護者が児童の所在を把握しているわけではなく、下校させても子どもが1人になりうる状況があるという前提に立って、避難や下校の措置と対策を講じる必要があると思われる。
(桐蔭横浜大学准教授:角替弘規)