TOP > 小学生白書Web版 > 2011年6月調査 > 速報版

小学生白書Web版

小学生白書Web版 2011年6月調査<速報版> 調査結果

震災前後の学校防災の認知度

★震災前は学校の防災に関する認知度は低かったが、震災後は学校の防災に対する保護者の関心が高まっている!?
Q6 東日本大震災(3月11日)が起こる前に、あなたのお子さんが通っている学校の防災に関して、次のことをどの程度知っていましたか。(N=927)。

図A-10 震災前の、子どもが通っている学校の防災に対する認知度

Q7 あなたのお子さんが通っている学校の防災に関して、現在、次のことを知っておく必要はあると思いますか。(N=927)

図A-11.学校の防災について知っておく必要性

保護者は学校防災についてどの程度認知していたのであろうか。東日本大震災(2011年3月11日)以前 における学校防災に関する認知度を、小学生(当時)をもつ保護者に尋ねたところ、図A-10の結果となった。

学校防災に関して、「十分知っていた」と回答している保護者はどの項目も1割未満である。「十分知っていた」と「ある程度知っていた」をあわせても「知っていた」と回答する保護者は、「災害時の子どもの下校方法」や「避難訓練等の防災教育」に関しては約半数であり、「災害時における学校との連絡手段」や「通学路で、災害時に危険になる場所や安全な場所」に関しては、半数にも満たない。加えて、これらの項目では「まったく知らなかった」と回答している保護者は、15%前後いる。「学校の防災計画」にいたっては、約4分の1の保護者が「まったく知らなかった」のである。このように、東日本大震災以前の段階では、学校の防災に関してほとんど関心が払われていなかったと言える。

学校の災害時における対応がどのようなものかを知らなかった保護者は、震災時に、子どもの下校や学校との連絡において大変な思いをしたのではないかと思われる。また、今回の震災時には、子どもの下校方法やその連絡に関して保護者と学校との間で混乱した状況が起きたと言われている。こうした混乱は、事前に学校防災について知っていることにより、ある程度防げると考えられる。

そこで、現在、保護者がどの程度学校の防災について知っておく必要があると思っているのかを尋ねてみた。その結果、図A-11に窺えるように、ほとんどの保護者は「災害時における学校との連絡手段」(98.5%)、「災害時の子どもの下校方法」(98.5%)、「通学路で、災害時に危険になる場所や安全な場所」(97.4%)、「学校の防災計画」(92.8%)、「避難訓練等の防災教育」(91.4%)のいずれについても知る必要があると感じている。今回の震災の教訓から、学校防災に対する保護者の関心が高まったと言えよう。

(明治学院大学非常勤講師:渡辺 恵)

図A-9. 震災時、保護者は子どもを確保できていたか

震災が起きた時に、保護者が最も関心を払うのは、自分の子どもの安否と所在であろう。先の質問で見た通り、学校の被災状況と子どもの下校方法については分からないと答える保護者が6割以上存在したが、「子どもがどこにいるか分からなかった」と答えた保護者は3割強にとどまっている。また、「子どもをひとりにしてしまうことがあった」と答えた保護者は約1/4であった。これらのことは、震災が起きた時間や曜日、子どもの学年や通学経路、放課後の過ごし方によっても大きく変わることであるため、ここで示された回答結果をもって「多い」「少ない」や「善し」「悪し」を判断することは難しい。金曜日の午後3時前という状況の中で、3割の保護者が子どもの所在を把握できず、1/4の保護者が子どもを1人にしてしまったという状況をどう考えるか、保護者と学校それぞれの立場で検討する必要があるだろう。例えば学校はすべての保護者が児童の所在を把握しているわけではなく、下校させても子どもが1人になりうる状況があるという前提に立って、避難や下校の措置と対策を講じる必要があると思われる。

(桐蔭横浜大学准教授:角替弘規)

 

▲このページのトップに戻る