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(明治学院大学准教授:石井久雄)
三陸地方で伝えられている「津波てんでんこ」。「津波が来たら、親子がてんでばらばらになってもかまわず、高台に行け」という意味である。「津波てんでんこ」を防災教育に取り入れていた岩手県釜石市では、東日本大震災で大津波に見舞われたにもかかわらず、小中学生約3000人のほとんどが無事だったという。
そうした釜石市の避難のあり方に着目した文部科学省は、児童・生徒が自らの判断で安全な場所に避難できるよう「防災教育」を見直す方針を決めた。そして、全ての学校に防災の専門知識を持つ教員の配置を進めるべく、2011年12月から研修を開始するという(2011年11月15日付読売新聞)。防災教育を充実するための動きが、広がっていっている。
さて、「分析編」では、全体像、家庭の状況、学年、下校方法等、様々な角度から3月11日の下校の実態と課題を明らかにしてきた。しかし、それらは、東日本大震災が起こったときの首都圏の状況を探ったにすぎない。東京近辺を震源とする大規模地震が起きたり、火災やビルの倒壊といった2次災害が多数発生したりしたとき、どのように子どもの身の安全を守るのか。安全を確保するため、学校から広域避難場所等へと全児童が移動したとき、子どもたちの下校はどうすればよいのか。その時々の災害の状況によって、子どもたちの下校の仕方も変更を余儀なくされることもありえよう。
そうした状況も踏まえ、まずは学校における防災計画や防災マニュアルの見直しやその徹底が重要である。しかし、想定外のことが起こりうる災害時にあっては、子どもの安全を確保するため、臨機応変に対応することも求められる。その時、学校が中心的な役割を果たすにせよ、保護者や地域住民の支援が必要となることは疑いようがない。子どもの安全をみんなで支えていくという意識の高まりに期待したい。