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(明治学院大学准教授:石井久雄)
3月11日は、電話やメールが不通になったところがあり、そのことだけでも、大きな混乱を引き起こす要因になった。連絡手段がないという、おそらく「想定外」の事態に、保護者も教師も、困り果てていたことであろう。
そうした3月11日に経験した困難を教訓として、今後いろいろ見直していかなければならない点があるであろう。自由回答に記された保護者の声に耳を傾けてみると、以下のような意見があった。「田舎で学区が広いので、一人一人に対応できるかどうかは分からないと思う。地域を分けて、教師が送っていく近隣地域、できれば迎えに来てもらいたい遠方地域などに分けるのが良いかもしれない」。「人数が多すぎる学校なので、先生だけではなく地域の大人・保護者も協力しないとなかなか安全な下校を実現できないと思う」。
これらは、地域の実情を踏まえながら、災害時の下校方法について弾力的な運用を提言するもの、災害時の下校に対して保護者や地域住民の協力を訴えるものである。そして、これまでの災害時の下校のあり方を反省し、次に活かしていこうという気持ちが込められた声である。子どもたちの安全・安心を充実させるには、教師だけではなく、様々な人の手が必要である。子どもを取り巻く大人たちが、これからどのように行動していくかにかかっている。
「集団下校」や「引き渡し」の問題点を自由記述で回答する部分に、「教師の奮闘ぶり」を書き込んだ保護者がいた。最後に、それらを紹介しておこう。「学童の子どもなど親がすぐに来られない子など、ずっと学校で預かってくれたこと。私は一人で帰されるよりは安全で確実に親が迎えに来るはずだから良いと思うが、最後の子が23時近くになった」。「今回学校は親が迎えに来るまで、遅くまで子どもを預かり、帰りかけていた低学年の子どもを先生が呼び戻していました。学校の対応はとてもよく安心しました」。夜遅くまで子どもを見守る献身的な教師や、臨機応変に対応する教師の姿が目撃されている。あの日の「教師の奮闘ぶり」も忘れてはならないだろう。