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遠藤宏美(宮崎大学特任助教)
東日本大震災がもたらした、首都圏における未曾有の大混乱は、学校における災害時の対応の在り方を否応なく再考させることとなった。(3)で触れたように、震度や実際の被害の状況が異なっていたために、対応も学校ごとに異なっていた下校の方法は、「臨機応変な対応でよかった」と評価する保護者がある一方で、連絡がつきにくい状況のもと、特に帰宅が困難になっている保護者にとっては不安を掻き立てる原因ともなってしまった。そこで東京都をはじめ首都圏の公立小学校の多くは防災マニュアルを見直し、子どもの下校の方法について基準を明確化する方向で見直しを図っているという注6)。たとえば埼玉県教育委員会や平塚市教育委員会(神奈川県)は震度5弱以上で、川崎市では震度5強以上で授業を中止し(いずれも小学校の場合)、子どもを学校に留め置き、保護者の迎えを待つことを防災マニュアルの基本方針に明記することとした。基準となる震度に若干の違いはあるものの、小学校では原則として引き渡しによる下校とする教育委員会が多いようである。
では、このような見直しの状況を保護者たちは認識しているのであろうか。図1-5は、「あなたのお子さんが通う小学校では、東日本大震災(3月11日)の体験を活かして、災害時の下校の方法について見直しが進められていますか」との問いに対する回答の結果である。「分からない」が最も多く半数を超えている(52.1%)が、このことは、学校が下校方法の見直しをしているかどうかが「分からない」ことを意味するものか、それとも保護者が関心を払わず、情報を入手していないことを意味するものなのか、判別ができない。それを踏まえると、「見直されている(あるいは「見直された」)」との回答が33.1%とおよそ3割を占めていることは、調査を実施した2011年6月中旬の時点で、学校が下校方法の見直しを進めていて、さらにそのことを認識している保護者が少なくとも3分の1いたということである。前述したように、多くの教育委員会で災害時の下校方法の見直しがはかられていることから、この割合が増加していることを期待したい。
図1-5 東日本大震災の体験を活かした、災害時の下校の方法についての見直しの状況(N=927、単位:%)