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小学生白書Web版 2011年6月調査>分析編>

第2章 学年別にみた東日本大震災時の下校の実態

角替弘規(桐蔭横浜大学准教授)

3.下校の大変さ
(1)震災時、家に大人がいない家庭の方が、子どもの下校は「大変」

 では、震災当日、それぞれの家庭において子どもの下校や引き取りはどの程度大変だったのだろうか。それぞれの家庭や地域の状況、家族の事情などは様々であり、「大変さ」と言ってもその内実を明確に定義することは難しいが、それでも様々意味を含めての「大変さ」がどの程度だったのかということも把握しておく意味はあるだろう。

 まず全体の回答結果を示したものが図2-3である。

図2-3 「東日本大震災(3月11日)のとき、あなたはお子さんの下校について大変に思いましたか」への回答(%、N=927)

 ここからも明らかな通り、「大変だった」と回答しているのは全体の約3割であり、約7割の保護者は「大変ではなかった」と回答していた。

 もう少し詳しくみてみよう。学年別に比較してみると(表2-5)、僅かな傾向であるが、低学年の児童の保護者の方が下校について「大変だった」と回答している割合が高い。さらに震災当時の大人の在宅状況別に比較したものが表2-6である。ここでは大人が在宅していた家庭の7割以上が「大変ではなかった」と回答しているのに対して、大人が在宅していなかった家庭のおよそ6割が「大変ではなかった」と回答している。つまり家に大人が誰もいない状況下において、保護者は子どもの下校について何らかの大変さを感じているといえる。

表2-5「東日本大震災(3月11日)のとき、あなたはお子さんの下校について大変に思いましたか」への回答(%、学年別)

  低学年
(N=309)
中学年
(N=309)
高学年
(N=309)
大変だった 32.7 31.4 28.8
大変ではなかった 67.3 68.6 71.2

「大変だった」は「とても大変だった」と「まあ大変だった」の合計

「大変ではなかった」は「あまり大変ではなかった」と「まったく大変ではなかった」の合計

表2-6「東日本大震災(3月11日)のとき、あなたはお子さんの下校について大変に思いましたか」への回答(%、大人の在宅状況別)

  大人在宅(N=568) 大人不在(N=359)
大変だった 27.3 36.8
大変ではなかった 72.7 63.3

「大変だった」は「とても大変だった」と「まあ大変だった」の合計

「大変ではなかった」は「あまり大変ではなかった」と「まったく大変ではなかった」の合計

(2)保護者の性別による認識の違い

 比較している中で気がついたのは、下校の「大変さ」の認識において、保護者の性別で違いが見られることであった。表2-7において示すとおり、男性保護者の方が「大変ではなかった」と回答している割合が高く、女性の保護者の方が「大変だった」と回答している割合が高くなっている。それは回答者が何を持って「大変さ」を感じているかということに関わってくるために、これ以上踏み込んだ分析はできないが、父親役割と母親役割の違いがこうした認識の違いに現れているのではないかと考えることができるのではないだろうか。

表2-7「東日本大震災(3月11日)のとき、あなたはお子さんの下校について大変に思いましたか」への回答(%、保護者の性別)

  男性(N=442) 女性(N=485)
大変だった 23.8 37.5
大変ではなかった 76.2 62.5

「大変だった」は「とても大変だった」と「まあ大変だった」の合計

「大変ではなかった」は「あまり大変ではなかった」と「まったく大変ではなかった」の合計