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(明治学院大学非常勤講師:渡辺恵)
家庭の状況別に、震災時の子どもの下校に関わる困難さをみてきた。東日本大震災が発生したときに、家に大人がいなかった家庭ほど、子どもの下校に伴う大変さが見受けられ、学校との連絡、子どもの所在の確認、子どもの安全を確保すること等、より多くの困難さを抱えていたことが見て取れた。また、「不在家庭」であったことに加えて、子どもの下校方法が「集団下校」だった場合には、そうした困難さがより増す傾向にあった。
災害となれば、今回の震災時の首都圏のように、公共交通網が混乱し、帰宅が困難な状況になることもある。そのため、災害が起こったときに、保護者が仕事先から子どもの所にすぐに駆けつけ、側にいることができない場合が多分に起こりうる。昨今、小学生の子どもを持つ家庭においても就労する母親が増えてきていることを鑑みれば、災害時に保護者が不在となる家庭はより増える可能性もある。震災の教訓を生かし、保護者が子どもの側にいられないことを想定して、災害時の下校に伴う対応を検討していくことが必要であろう。
また、東日本大震災では、下校途中で震災にあった子どももいた。下校途中で子どもが災害にあった場合、大人の目が届かず、子どもがひとりで判断し、行動しなければならない。その場合には、子ども自身が災害時に安全な道や場所、危険な箇所や行動を予め知っていることが鍵となる。この点も、今回の震災で課題として浮かび上がったことと思われる。学校では、今回の震災を契機に、校内だけではなく、通学路や家庭で被災した場合を想定して、どのように対応するのかを考える防災教育が進められているようである(1)。
そうした取り組みは、家族の中でも必要となるのではないだろうか。この点に関して、調査結果からは、学校防災に関して知っておき、災害時にどのような行動を取るかを子どもと話し合っておくなどの家庭での取り組みが、保護者の不在によって生じる困難さをある程度抑えられていたことが窺えた。つまり、家族でも、家の中や通学路を子どもと一緒に観察しながら、具体的にどのように行動するのか、家族との連絡の取り方、誰に助けを求めるのかなどを親子で確認・約束し、防災の意識を高めておくことが大切になのではないだろうか。