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角替弘規(桐蔭横浜大学准教授)
これらのことについて、もう少し詳しくみてみよう。
当初筆者は「知っていた」「知らなかった」の認識の差異が、子どもの学年の違いによって生じているのではないかと考えた。そこで、子どもの学年ごとに各項目について「知らなかった」と回答した割合を比較した(表2-1)。
表2-1 「東日本大震災が起こる前にあなたのお子さんが通っている学校の防災に関して、次のことをどの程度知っていましたか」への回答(学年別、「知らなかった」(「あまり知らなかった」と「まったく知らなかった」の合計)の%)
低学年 (N=309) |
中学年 (N=309) |
高学年 (N=309) |
|
---|---|---|---|
学校の防災計画について | 73.7 | 68.6 | 66.7 |
災害時の子どもの下校方法について | 53.7 | 55.9 | 41.4 |
災害時における学校との連絡手段について | 57.0 | 52.7 | 55.3 |
避難訓練等の防災教育について | 52.8 | 46.6 | 49.5 |
通学路で、災害時に危険になる場所や安全な場所について | 61.5 | 55.1 | 52.5 |
学校の施設・設備の安全点検について | 77.3 | 72.1 | 70.6 |
学校が避難所に指定されているかどうかについて | 41.5 | 35.9 | 38.2 |
「低学年」は小学校1・2年生、「中学年」は小学校3・4年生、「高学年」は小学校5・6年生
高学年になるほど「知らなかった」と回答する保護者の割合が低下するのは「学校の防災計画について」、「通学路で災害時に危険になる場所や安全な場所について」、「学校の施設・設備の安全点検について」の3項目であった。通学路上の危険な場所あるいは安全な場所に対する認識は、経験による認識の違いもあると思われるため、高学年であるほど「知らない」割合が低下するのではないかと思われる。
しかし、必ずしもすべての項目が高学年ほど「知らない」割合が低い傾向を示しているわけではなかった。例えば、「災害時の子どもの下校方法について」では低学年と中学年ではむしろ中学年の方が僅かながらではあるが「知らない」割合が高い。その一方で高学年では「知らない」割合が5割を下回っていた。「災害時における学校との連絡手段について」では、「知らない」割合が最も低いのは中学年であった。
このように学年ごとに比較してみたが、経験の多い高学年ほど「知らない」割合が減るということはなく、その回答の傾向が大きく異なることはなかった。すなわち、高学年の児童、高学年の児童の保護者であるということを理由に、災害対策を知っているというわけではない、ということが言えそうである。今回の調査を行うに当たっては、複数の子どもを持つ回答者に対しては年齢(学年)の低い子どもを想定して回答してもらっているため、同じ学校に通う年上のきょうだいがいる場合などは、当然のことながら防災対策等に関する経験や認知は高くなっていくものと思われる。いずれの場合にしても、学校側が日常的にどのような防災対策を講じているか知っておくことは適切な避難を行ううえで欠かせないことであろう。これらに対する認知はどの学年の児童・保護者であっても、通学路の状況や、連絡手段、引き取り方法、防災計画等についての周知が等しく求められるということを示していると言えるだろう。