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(明治学院大学非常勤講師:渡辺恵)
前述のように、保護者の就労状況別では、保護者が共にフルタイムで働いている家庭において、他の家庭に比べ、子どもの下校に関してより大変に感じていたことがわかった。そのことを踏まえるならば、震災当日、大人が家を不在にしていた家庭の方がより大変だったのではないかと考えられる。そこで、震災の発生時に、家に大人がいたかどうかの違いから、下校の大変さを今一度確認しておこう。図3-3は、保護者の在宅・不在宅と子どもの下校をめぐる大変さとの関係を示したものである。「在宅家庭」のうち、「大変だった」と回答している家庭は27.4%(「とても大変だった」と「まあ大変だった」の合計)である。「不在家庭」では36.8%である。「不在家庭」の方がやはり子どもの下校に対して大変さを感じていたようである。この点から、災害時に保護者が家を空けている場合、子どもの下校に対する保護者の負担がより増えやすいと考えられる。
図3-3.下校方法別、震災時の大人の在宅・不在別にみた震災時の子どもの下校方法に伴う保護者の大変さ(%)
こうした大変さは、下校方法によってどの程度違ってくるのであろうか。震災発生時における大人の在宅(「在宅家庭」)と不在宅(「不在家庭」)にわけて、下校方法と子どもの下校に伴う保護者の大変さの関係をみてみよう(図3-3参照)。その結果、下校方法による違いは、「在宅家庭」では大きく表れているが、「不在家庭」ではほとんど見られないことがわかる。「在宅家庭」では、震災当日の子どもの下校が「集団下校」であった場合、「とても大変だった」と回答している割合は、3.4%であり、「まあ大変だった」の回答を合わせても、「大変だった」と感じている保護者は2割程度である。それに対して、「引き渡し」による下校の場合、「とても大変だった」と回答している割合が11.6%と、「集団下校」の3倍近く高くなっている。「まあ大変だった」の回答を合わせると、「大変だった」と感じた保護者は、「集団下校」に比べ「引き渡し」では約14ポイントも増える。「在宅家庭」の場合、震災時における子どもの下校方法が保護者の負担を左右していたと言えよう。
「不在家庭」の場合、「集団下校」では「大変だった」と回答している割合(「とても大変だった」と「まあ大変だった」の合計)は38.7%であり、「引き渡し」では37.7%である。震災時に保護者が家を不在にしていた場合には、どちらの下校方法をとっても4割近くの保護者が大変であったことがわかる。言い換えれば、「不在家庭」の場合、下校方法によって、保護者の負担が変わるわけではないようである。保護者が「不在」であるという、そのこと自体が子どもの下校における大きな課題となりやすいと考えられる。