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(明治学院大学非常勤講師:渡辺恵)
学校防災に対する認知度は、震災時の子どもの下校に伴う保護者の困難さをどの程度軽減できるのだろうか。このことを探るために、まずは学校防災に対する認知度を示す尺度を作成する。先にみた学校防災に関わる7つの項目の回答を、「十分に知っていた」を3点、「ある程度知っていた」を2点、「あまり知らなかった」を1点、「まったく知らなかった」を0点とした上で、全ての項目の合計点を算出し、0~21点までの得点をだした。合計得点の分布をもとに大きく3つの群にわけ、0~7点までを学校防災認知度の「低群」、8~12点を「中群」、13~21点を「高群」とした(表3-5)。
人数 | 割合 | |
---|---|---|
低群(0〜7) | 326 | 35.2 |
中群(8〜12) | 342 | 36.9 |
高群(13〜21) | 259 | 27.9 |
合計 | 927 | 100.0 |
表3-5.学校防災認知度群
図3-7は、学校防災認知度別に震災時の子どもに関わる困難な状況が「あった」と回答した割合を示したものである。学校防災認知度の「高群」では、「子どもをひとりにしてしまう時間があった」と回答している割合が16.2%であるのに対して、「低群」では3割近くになっている。同様に、「高群」は「子どもがどこにいるのかが分からなかった」、「子どもの状況について誰に相談したらよいのか分からなかった」といった項目でも、「低群」に比べ約10ポイント低くなっている。学校防災認知度が高い人ほど、災害時における子どもの下校方法や学校との連絡の取り方に関して知っているため、子どもがどこにいるのかを想定できたと考えられる。そのことによって、子どもがひとりで過ごすことがないように、対応がうまくとれたのではないだろうか。
図3-7.学校防災認知度別にみた、震災時に困難な状況が「あった」割合(%)
震災時に大人が不在であった家庭において、保護者は子どもの下校に関してより困難な状況におかれていた。このことを踏まえ、震災時に保護者が不在であった家庭に絞り、学校防災の認知度が震災時における困難な状況にどのような効果があるのかを探ってみよう。表3-6から見て取れることは、「不在家庭」では、学校防災の認知度の高さが震災時の困難な状況をある程度軽減させていたことである。例えば、「子どもがどこにいるのか分からなかった」ことは、「低群」では45.3%と半分近い家庭で生じていたのに対して、「高群」では3割程度に抑えられている。「子どもひとりにしてしまう時間があった」ことは、「低群」では4割越えているのに対して、「高群」では25.8%と、17ポイントも低くなっている。言い換えれば、学校防災の認知度を高めることが、災害時に保護者が家を留守にしていたとしても、それによって生じやすい困難な状況を回避することにある程度つながると言えよう。
表3-6.震災時の大人の在宅/不在、学校防災認知度別にみた震災時に困難な状況が「あった」割合(%)