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小学生白書Web版 2011年6月調査>分析編>

第4章 下校方法別にみた東日本大震災時の下校の実態

(明治学院大学准教授:石井久雄)

3.引き渡しの実態と課題
(3)引き渡しの課題:その2

 「引き渡し」の問題点を、別の角度から補足しておくことにする。「あなたが感じた災害時の『引き渡し』の問題点」を自由記述で回答してもらったところ、以下のようなものが挙げられた。

 第1に、「保護者が誰も迎えにいけない児童の扱い」に関する回答が数多く寄せられた。「引き渡し」の場合、保護者が帰宅困難な状況に陥ってしまったとき、子どもが深夜まで学校にいることになり、精神的・肉体的に負担がかかってしまう。前述のように、負担軽減にむけてどう対応していくかが、引き渡しの最も重要な点であるといえよう。

 第2に、「引き渡しに時間がかかった」ことに関する回答も多く寄せられた。学校に急いで迎えにいったのにもかかわらず、実際に子どもを引き渡してもらうまでに長い時間待たされたという問題である。寒空のもと暗くなっていくなかで、校庭で子どもがずっと待っていたという記述もあり、改善が望まれる。

 第3に、引き渡しカードに関してである。前述の「記載していない者」に引き渡した問題、「記載してある者」にしか引き渡さない問題も、自由回答で指摘されていた。それに関連して、「(引き渡しカードに)近所の人も書いておくべきだった」、「親や親族以外の近所の人をカードに書いていないと意味がない」といった回答があった。保護者や祖父母だけでは対応しきれないケースも考えられるので、近所の人も、引き渡しカードに記載できると良いと思われる。しかし、「3月の震災時、引き渡し名簿に名前のない者に子どもを引き渡したのは確かに問題だったと思う。子どもの所在が分からなくなる最悪の事態もあったので」という意見もある。近所の人を引き渡しカードに記載するにあたっては、緊急時の対応について、普段から近所の人とよく話し合っておく必要がある。

 このように、「引き渡し」には、手続き上の問題や、学校に取り残される子どもの問題が生じてくるといえよう。