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シリーズ「教育大変動」を語る
第2回
「義務教育の構造改革がもたらす課題」
学校選択制で選別される子どもと保護者
- 古川:
- 内閣府の規制改革・民間開放推進会議は昨年12月21日に第2次答申をまとめ、翌日閣議決定されました。そこには、義務教育の構造改革を押し進めるための提言がいくつも盛り込まれています。そのうち特に3点お伺いします。一つ目が学校選択制の実質的実現です。現在、小中学校で完全な学校選択制を導入している自治体は約1割に過ぎません。しかし、自治体が選択制を導入していなくても、いじめや部活動、地理的な理由でほとんどの場合学校選択が可能となります。
- 藤田:
- 小中学校の教育は、基本的には共通基礎教育です。高校や大学へ行って十分に学習できるように、また将来の職業生活や社会生活をしていくうえで共通の基礎となるものを、きちっと学習することが重要です。ですから内容面でそんなに多様性があるはずはないのです。もう一つ小中学校の教育の重要な要素は、生活の場でもあるということです。つまり、いろんな子どもが一緒に同じ空間で同じ時間を過ごすということです。
この二つがまず前提となります。生活の場は、どの子も安全で安心して過ごせる場でなくてはなりません。また、共通基礎教育は、すべての子どもにとって差別されない豊かなものでなければなりません。その2点で充実した豊かなものであればいいのであって、それ以上の何か特殊なことをやる必要はないのです。
ですから、私は総合的な学習の時間には批判的でした。総合的な学習は学校教育、義務教育の中核部分から言えば周辺的なことなのです。それは重要ではないという意味ではありません。周辺的なことを売りにして、学校を差別化し始めてはいかんということなのです。
- 古川:
- しかし、実際に導入されている地域では、人気校と不人気校が明らかに分かれてきています。
- 藤田:
- そうですね、しかし、学校を選べるという側面ばかりが強調されますが、実は子どもや保護者は学校を選んでいるのではなく、そこに集まってくる子どもたちを選んでいるのです。それが選択制の隠れた本質です。
言い換えれば、学校の良し悪しや評価の半分は、そこに入っているのはどういう子どもたちか。あるいはそこに子どもたちを入れている保護者はどういう人たちかで決まるということです。それは、高校大学の偏差値による評価をみればわかります。義務教育段階で、そういう差別的な制度を持ち込んでいいのかということです。
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