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シリーズ「教育大変動」を語る
第10回
教員のストレスは、残業減では解決しない!
教員が抱える問題を洗い出すプレ調査
●「教職員の健康調査」概要
- 実施者:
- 教職員の健康調査委員会
- 発表:
- 2006年10月
- 調査方法:
-
- 調査対象 大阪府、神奈川県、岩手県、大分県、鳥取県の合計6,000名の小中高の教職員
- 調査内容 仕事生活時間、職務内容、最近の学校教育・職場・仕事生活の状況、健康状態、ストレス要因、ストレス反応、上司・同僚などのサポート、仕事・生活の満足感、学校の健康対策や安全衛生体制
- 調査時期 2005年11月
- 分析対象者の属性や特徴:
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- 有効回答数:2,485名/平均年齢:男性43.3歳、女性43.4歳
- 約2/3の教員が、対応に注意や時間を要する児童や生徒が複数いる/80%以上の教員が中心的役割を担う校務分掌に携わっている
- 古川:
- この調査では、どのような観点で調査項目をピックアップなさったのでしょうか。
- 酒井:
- 調査に先立って、現場の教職員にとって、仕事あるいは生活の上で何がストレスになっているのか、徹底したプレ調査を行いました。
どういう指標をとれば現場の先生方の実態を捉えられるのか、繰り返しヒアリングすることで情報を集め、こういうことが要因になっているのではないかという仮説を立て、それをまた現場の先生たちに聞いて調査項目を作っていきました。
例えば「教育活動をとりまく環境」が非常にストレスになっているということを言われるわけですね。これをヒアリングで得られた情報から整理すると、例えば、児童・生徒との関係の難しさをストレスと感じているという項目群が出来るわけです。
調査には「学校教育と職務遂行の仕組み」という項目があります。これは、最近ではさまざまな事務作業で書類を作らなくてはならず、そのことが負担になるという声を反映したものです。同じように、「仕事と生活への影響」という項目は、学校での仕事と自分の家庭や自分自身の生活とのバランスがうまくとれないといった意見を元に盛り込みました。
このように、ヒアリングで上がったたくさんの項目を整理した上でアンケートを作り、その回答を因子分析を用いて分類して、関連の強い項目をカテゴリに分け、カテゴリごとの相関関係を調べていったのです。
その結果、抑うつ感などのストレス反応に影響していると思われる相関図を導きだすことができました。次ページのパス解析図がその結果を表したものです。
●主な調査結果
- 仕事状況:
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- 超過勤務時間は37.2%が10時間/週以上
- 担任教員の平均退勤時刻は18時41分
- 平均睡眠時間は6時間27分
- 休憩時間は、86.6%が「いつも取れなかった」または「取れないことが多かった」
- 小中学校教員の90%以上が勤務時間中の休息が取れていない
- 持ち帰り仕事時間は19.1%が10時間/週以上
- 健康状態と安全衛生管理体制:
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- 健康状態「非常に」+「やや」不調である 45.6%
- 仕事での神経の疲れ「とても」+「やや」疲れる 84.0%
- 強い不安、悩み、ストレス「ある」 67.1%
- 将来の健康不安「大変」+「少し」不安を持っている 91.0%
- 心理的な仕事の負担度(量)は標準値と比べ、男性は2.2倍、女性は4.6倍
- 抑うつ感は、男性教職員では標準値の1.8倍の11.5%
- 安全衛生委員会が「設置されているかどうか知らない」という回答が26.9%
- 健康や安全衛生教育は「行われていない」48%、「行われているかどうか知らない」37.0%
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