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角替弘規(桐蔭横浜大学教授)
これまで行われてきた国際比較調査の結果では、日本の子どもたちの理科の学力は世界のトップレベルにあることが知られている。例えば2003年に実施されたIEA(国際教育到達度評価学会)による「国際数学・理科教育動向調査の2003年調査」(TIMSS2003)では、調査対象となった小学校4年生では25か国中第3位、中学校2年生では参加46か国中第6位と、いずれも上位グループに属していることが明らかとなっている I。OECDによる国際比較調査(PISA調査)においても、日本の子どもたちの科学的リテラシーは上位に位置づけられていた 。II
このように国際比較調査では他国と比べて日本の子どもたちの理科の学力が高いことが示されている一方で、子どもたちの「理科離れ」もかねてから指摘されている。文部科学省が2012年4月に行った「全国学力・学習状況調査」においては、世間のこうした懸念を受けてなのか、初めて理科に関する調査が実施された。その結果、小学校6年生の82%が「理科の勉強は好き」、86%が「授業の内容はよく分かる」と答えているのに対して、中学校3年生ではともに62%、65%へと減少していることが明らかになった。また、「将来、理科や科学技術に関係する職業に就きたいと思う」児童の割合は29%にとどまっており、理科好きであること、授業内容をよく理解できることが、将来の目標とは必ずしも強い結びつきを持っているわけではないことも明らかにされているIII 。
こうした「理科離れ」の傾向を受けて、教育行政や教育現場においては様々な教育実践が取り組まれている。また、理科実験を行うイベントが盛んに行われたり、理科実験を専門とする塾が出現したりするなど、我々の生活の様々な場面においても「理科離れ」を食い止めるための様々な取り組みがなされている。このように、子どもたちの理科に関する興味と関心を引き出し、科学的な思考と態度を身につけるための効果的な実践が、学校内外を問わず今後も検討されていくものと思われるが、では、学校教育や生涯学習の場におけるそのような取り組みは、どのような子どもに対しても効果があると考えることができるのだろうか。理科が好きな子ども、あるいは、理科が好きになる子どもは、どのような子どもなのだろうか。我々はこの点に興味を抱いた。
そこで我々は、子どもの理科好き(選好傾向)と家庭における教育についての取り組み方や保護者の方々の教育意識にどのような関係があるのかを明らかにするために調査を行った。どのような家庭の子どもが理科が好きな傾向にあるのか、また、保護者の方は子どもの教育や子育てについてどのような意識を持っているのか、あるいは日頃どのような生活を送られているのか。こうした点に関する分析を行うことで、理科が好きな子どもの家庭や保護者についての背景を明らかにし、今後子どもの「理科離れ」を食い止め、さらに理科が好きな子どもを増やすための方策を検討したい。