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小学生白書Web版 2012年7月調査

第1章 保護者の属性から見た子どもの「理科好き」

角替弘規(桐蔭横浜大学教授)

1.子どもの「理科的な活動」への取り組みと「理科好き」

保護者の属性に基づいた分析に入る前に、今回の調査において子どもの「理科好き」をどのようにとらえたかについて説明しておこう。

この調査は小学6年生の子どもの面倒を主にみている保護者にすべての回答を依頼した。したがって、子どもが「理科好き」であるかどうかということも、子ども本人に確かめているということよりも、普段保護者の目から見て自分の子どもが理科が好きそうかどうか、ということを判断してもらっている。これは理科の成績についても同様である。特に成績については通知表の結果に基づいた回答を依頼してはいるものの、成績の良し悪しの程度についての判断は回答者に一任した。これは学校ごとに成績表の尺度が違ったり、厳密にテストの点数で成績の良し悪しを定義してしまうことが困難であったりするためでもある。

これらの回答を分析に用いるにあたっては、子どもの「理科好き」を尋ねた「あなたのお子さんは、理科が好きですか」という質問項目に対する選択肢「とても好き」「まあ好き」を「好き」として、また「あまり好きではない」「まったく好きではない」を「嫌い」として再集計した。

また成績について尋ねた質問項目「あなたのお子さんの理科の成績は、学校のテストの点数や通知表から見てどれくらいですか」では「とても良い」と「まあ良い」を「良い」として、「あまり良くない」、「まったく良くない」を「悪い」として再集計した。

さらに、今回の調査では、特に理科の内容に関連するような生活や行動についての子どもの意識(好きか嫌いか)について尋ねている。特にその中でも理科や科学の興味を増したり、理科の学習に影響を及ぼすのではないかと考えられる活動として、次のような項目を想定した。すなわち、「野原や空き地、里山、川などの自然の多いところに出かけたり、遊んだりすること」、「博物館や美術館、図書館に行くこと」、「天体や気象の観測・観察をすること」、「科学や理科に関する本を読んだり、図鑑を見たりすること」、「科学や理科に関するテレビ番組を視聴すること」、「身の回りにある日常品や自然のものを使って、おもちゃなどを作ること」、「機械の製作・修理や分解をすること」、「植物や動物、昆虫を育てること」の8項目である。これらそれぞれについての回答が「とても好き」の場合には3点、「まあ好き」には2点、「あまり好きではない」には1点、「まったく好きではない」には0点を与え、8項目すべての回答について回答者ごとの合計得点を算出した。いずれの活動も「とても好き」と答えていれば24点、その逆であれば0点となる。つまり理科的な活動を好んで行う子どもであれば点数は高くなり、あまりそうした活動を好まないのであれば点数は低くなる。筆者は回答者全員(1028人)についてこの得点の分布を調べ、その分布に基づいて全体が約3等分となるように操作的に「低群」、「中群」、「高群」の3グループに分割。これらを「理科活動得点群」として分析に用いることとした。表1-1はこれらの得点群の人数の内訳を示したものである。

表1-1 理科活動得点群の内訳(N=1028)

表

以上によって算出した「理科活動得点」は子どもの「理科好き」と何か関連が見られるか、両者の関係をみてみようとまとめたのが表1-2である。

表1-2 「理科活動得点」と「理科好き」(%)

表

従来の様々な調査では、全般的に日本の小学生は理科が好きであることがたびたび指摘されている。表1-2においてもそのことが示されている。すなわち、相対的に理科活動得点が低い「低群」であっても、「理科が好き」と答えている保護者が半数近くにのぼる。したがって、日頃から理科に親しむような活動を嫌いな子どもでも、ある程度「理科好き」であると考えることができる可能性がある。しかしながら、日頃理科的な活動を行うことが好きな「高群」においては、そのほとんど(約95%)が「理科が好き」と答えている。ここに着目するならば、やはり日頃から理科に関連するような活動を好んでする子どもは圧倒的に「理科が好き」ということが言える。

ではこうした認識を踏まえたうえで、第2節以降では家庭の特徴を示すいくつかの指標と子どもたちの「理科好き」について検討していくこととしたい。

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