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角替弘規(桐蔭横浜大学教授)
2009年に経済協力開発機構(OECD)が行った国際学力比較調査(PISA調査)によれば、「生徒の社会経済文化的背景」について生徒の読解力や数学的リテラシー、科学的リテラシーにおける平均得点を比較すると、すべての国において得点差が認められたとされている。しかしながら日本について言えば、それらの得点差はやや小さい傾向が認められたというI 。
このことから少なくともふたつのことを指摘できると考えられる。すなわち、①子どもの学力は、どのような家庭において育つのかということと無関係ではないということ、②日本においてはしかし、家庭環境の影響は他国ほど大きな影響を与えているわけではないということである。子どもの育つ家庭環境は、子どもの学習の出来不出来を左右する要因の一つであるが、日本では他国ほど大きな差を生じさせているというわけではない、ということである。
先の調査の結果に従って、子どもの学力にその子どもの家庭環境が多少なりとも関連しているという前提に立った時に、「理科好き」について検討する場合もやはり子どもの家庭の在り方がいかなるものなのかを考えていかなければならないだろう。そこで以下では、保護者の属性を示すいくつかの項目から子どもの「理科好き」について検討したいと思う。
まず第1節では、保護者の属性を踏まえた分析に入る前に、従属変数となる子どもの「理科好き」や「理科的活動への取り組み」をいかにとらえるのか、それらの関係はいかなるものなのかについて検討する。
続く第2節では保護者の職業に着目しながら子どもの「理科好き」との関連を考察する。保護者がどのような職業に就いているかということは、家族の生活リズムや時間のみならず、会話の内容や娯楽の傾向、視聴するテレビ番組などありとあらゆる部分に影響を与えるものと考えられる。ただし先述のとおり、今回の調査回答者の約9割が女性であること、またその多くが専業主婦であることから、ここでは主に夫の職業に着目して分析することとした。
第3節では世帯収入に着目した。家計に占める教育費の高さを考慮するならば、やはり家庭の経済的状況は子どもの日頃の学びの在り方を左右する重要な要素であると考えざるを得ない。そしてそれらが子どもの「理科好き」に何らかの影響があるかどうかを探るためにも、家庭の経済状況を指標として分析を試みた。
第4節では保護者の学歴に注目した。保護者の方がどの学校段階まで学んでいたかという経験が、現在の子どもの学習の在り方に何らかの影響があるのではないかと考えたからである。また保護者がどのような学校教育を受けていたのか(理系/文系の違い)ということと、子どもの「理科好き」との関連についても分析する。これは第3節の学歴による比較と類似するが、特に子どもの「理科好き」との関連から、保護者の方々が生徒や学生であった時代に、理系・文系のどちらの科目を重点的に学んでいたのかということが、現在の子どもの学びやそれに対する姿勢に何らかの違いがあるのではないかと考えたからである。