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角替弘規(桐蔭横浜大学教授)
では、保護者の職業別に見たときに、子どもの「理科好き」にはどのような違いが見られるのであろうか。先述のとおり、今回の調査回答者の9割が女性であり、その半数以上が「専業主婦」、1/4以上が「パート・アルバイト」ということであった。したがって、保護者の職業別に分析することが難しくなるため、以下では父親の職業から分析を試みる。
まず父親の職業の分布がどのようなものであるかを概観しておこう(図1-1)。
図1-1父親の職業の内訳(N=1028)
図1-1において示す通り、「管理職以上」(N=192、18.7%)、「専門技術系職員」(N=158、15.4%)、「販売・サービス・事務系職員」(N=161、15.7%)、「生産工程・運輸従事者」(N=97、9.4%)、「その他の正社員・正規職員」(N=168、16.3%)、「自営業」(N=90、8.8%)の6つのカテゴリーで、全体の84.3%を占めることとなる。これら6種類の職業以外では、母数が非常に少なくなるため単純な比較が困難である。そこで、母数として100名程度の規模となるこれら6つの職業について分析する。
全体の約85%を占める6つの職業ごとに「理科好き」の子どもの割合を比較したものが表1-3である。
全体として自分の子どもは「理科が好き」と回答している割合が74%を占めているため、「好き」か「嫌い」で区別して分析することが困難である。そこで、「理科好き」の子どもがどれくらいいるのかということで比較した。
表1-3 父親の職業と子どもの「理科好き」
*「とても好き」と「まあ好き」の割合の合計
これによると、どの職業においても7割前後の子どもが「理科好き」ということが分かる。ごくわずかな差異に着目して言うならば、最も「理科好き」が多いのは父親が専門技術系職員の家庭、すなわち技術者・教員・記者等の家庭の子ども,次いで自営業ということになった。これらと比べて「理科好き」の子どもの割合が低いのは父親が「その他の正社員・正規職員」の家庭の子どもということになる。
もう少し詳しく検討しよう。
先に分析した「理科好き」は、理科が「とても好き」と「まあ好き」の割合を合計したものである。では理科が「とても好き」な子どもの割合についてはどうだろうか。全体では理科が「とても好き」な子どもは約20%という結果であった。6つの職業の中で比較したときに、最も「とても好き」な子どもの割合が多いのは父親が「生産工程・運輸従事者」をされている家庭であった。その次に「専門技術系職員」が位置している。逆に20%を下回る数値を示したのは「管理職以上」と「販売・サービス・事務系職員」の家庭であった。
「生産工程・運輸従事者」あるいは「専門技術系職員」という分類においてイメージされるのは、理数系技術系工学系をベースとしたどちらかと言えば「理系」中心の仕事である。その意味では、父親をはじめとする保護者の職業が子どもの理科の選好傾向に何らかの影響を及ぼしていると、言える可能性がある。ただ、あまり大きな数値の差が見られたわけではないため、断言することは難しい。