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渡辺恵(明治学院大学非常勤講師)
子どもの教育達成に対する保護者の構えをみておこう。図2-4は、小学6年生の子どもをどの段階まで進学させたいかを尋ねた質問の結果である。
図2-4.小学6年生の子どもに期待する進学段階
(全体、性別・出生順位及び性別・学習関与志向別 単位:%)
全体では、「大学まで」の進学を期待する家庭は7割弱であり、「大学院まで」を含めると7割を越える。多くの家庭が、子どもに大学以上の教育を受けさせたいと考えているのがわかる。ただ、子どもの性別・出生順位ごとにみていくと、子どもの性別によって、進学期待が異なっているのがわかる。大学以上の進学を期待する割合(「大学まで」と「大学院まで」と回答した合計)は、男子の「第一子」では78.7%、「第二子以降」では78.5%である。女子の「第一子」では67.4%であり、「第二子以降」では65.8%である。小学6年生の子どもが男子である場合、保護者はより高い教育達成を望むことが窺える。
なお、子どもの出生順位による違いは、男子ではほとんど見て取れないが、女子では、その子が「第二子以降」の場合、「第一子」に比べ「高校まで」の進学を期待する家庭が多くなっている。女子では、第一子に対しては高校卒業後も教育を受けさせたいと考える傾向が強いようである。
子どもの学習に積極的に関与している家庭では、子どもの教育達成に対してどのように捉えているのだろうか。この点を確かめるために、「学習関与度」の得点をもとに各家庭を、得点の高い順から、「強群」(7~9点 253家庭)、「中群」(5~6点 558家庭)、「低群」(0~4点 217家庭)の3つに分類した「学習関与志向」を作成した。男子・女子に分けて「学習関与志向」別に分析した結果は上記の図2-4に示す通りである。
この結果から、子どもの性別によらず、保護者の「学習関与志向」が強い家庭ほど、「大学」または「大学院」までの学校段階に進学を期待する傾向が強まっていることが窺える。特に、男子の場合、「大学」または「大学院」まで進学することを期待する家庭は、強群では89.5%まであがっている。それに対して低群では72.8%にとどまっており、強群との差は約17ポイントもある。子どもの教育達成に向けて、保護者が子どもの学習に対して積極的に関与していることが、ここから証左されよう。
ところで、子どもの教育達成に対する保護者の構えは、子どもの性別や保護者の「学習関与志向」以外にも、保護者自身の教育経験によって左右されると考えられる。このことを検討するために、保護者が大学または大学院での教育経験を持つかどうかに着目して、みていこう。図2-5は、保護者の大学での教育経験(最終学歴が「大学」または「大学院」であること)の有無別に、子どもに期待する進学段階を「大学まで」または「大学院まで」と回答した割合を示したものである。
図2-5.「保護者の大学の教育経験の有無」別、世帯年収と「保護者の大学の教育経験の有無」別にみた、小学6年生の子どもに対する「大学」・「大学院」進学への期待(単位:%)
両親共が大学以上の教育経験を持っている家庭では、子どもに大学以上の進学を期待する割合(「大学まで」と「大学院まで」の合計)は95.8%にも上り、自分と同じように大学以上の教育を子どもに経験させたいという構えが見て取れる。両親のうち、どちらか一方の親が大学以上の教育経験を持っている家庭では、大学以上の進学を期待する割合は83.0%であり、やはり大学以上の教育を経験させようとする思いが強い。それに対して、大学以上の教育経験を持っていない両親の場合、子どもに大学以上の進学を期待する割合は58.4%まで下がる。子どもに大学以上の進学を期待する構えは、保護者自身の大学教育経験に起因すると考えられる。
付言すれば、世帯収入を統制すると、保護者の大学以上の教育経験の有無による影響がより明確に表れる。各母数が小さいため数値は参考程度となるが、世帯収入が低い場合でも、保護者が大学以上の教育経験を有している家庭では、子どもに大学以上の進学を期待する割合が高いままであることがわかる。世帯収入が800万円以上になってようやく保護者の大学以上の教育経験の有無による差が小さくなる。したがって、親が大学教育以上の経験を有する家庭では、子どもにも高学歴を獲得させることを目指す教育方針がとられていると言えよう。
以上のように、子どもの教育達成に対する期待では、多くの家庭が小学6年生の子どもに「大学」段階の教育を受けさせたいと考えていることがわかった。その傾向は、子どもが男子である場合や保護者が大学教育の経験を有している場合では、特に著しくなる。さらに、「学習関与志向」が強い家庭でも同様であった。「学習関与志向」の教育方針では、教育達成に向けた教育戦略の一環として、理科に関わる取り組みが位置づく可能性が考えられる。この点は、次節以降で検討していていきたい。