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遠藤宏美(宮崎大学特任助教)
第1節の結果からは、「理科好き」な子の特徴として、①男子に多い、②「論理的・計画的」な資質や「好奇心旺盛・行動的」な資質を持ち合わせやすい、ということがわかった。では、子ども本人が持ち合わせた性質ではなく子どもの周囲、すなわち「環境」による影響を考えることはできないだろうか。「理科好き」をより育みやすい、あるいは「理科好き」を支える「環境」というものはあるのだろうか。
「理科好き」と「環境」との関連を考えるうえで、まことしやかにささやかれるこのような噂を聞いたことはないだろうか、「『地方』に住む子のほうが、『都会』に住む子よりも理科が好き」であると。たしかに、一般的に「地方」には森林や川、海などの自然が多く、そうした自然に触れ合う機会が比較的多いといえるだろう。では、自然が身近に少ない「都会」や「都市部」に住んでいる子は、理科を好きになりにくいのだろうか。身近にはないからこそ、自然に憧れ、理科に興味を持つということは考えられないだろうか。あるいは、「都会」のほうが「地方」に比べて、図書館や博物館など理科の学習のサポートや科学に興味を抱かせるような施設が整備されていたり、そのような施設への交通アクセスがよかったりして、理科や科学に親しんでいくということはないのだろうか。
そこでまず、子どもたちが生活する地域を「都市部」と「地方」(6)とに分けて、「理科好き」との関連を調べてみた(図3-13)。この結果を見ると、地方において若干、「理科が好き」(「とても好き」+「まあ好き」の合計:「都市部」72.4%<「地方」75.2%)が多いものの、有意な差は認められない。
図3-13 居住地域別に見た、「理科好き」な子どもの割合
(理科が「とても好き」+「まあ好き」の合計)
居住地域別・男女別に見てみると(図3-14)、都市部に住む女子に比べて地方に住む女子に、「理科好き」がやや多く見られる(理科が「とても好き」+「まあ好き」の合計:「都市部・女子」62.3%<「地方・女子」67.0%)が、こちらも大きな差があるとまでとはいえない。全体的に見れば、都市部に住んでいても地方に住んでいても、「理科好き」であるか否かにはあまり関係しないことがわかる(7)。
むしろこの図からわかることは、「都市部・男子」と「都市部・女子」の「理科好き」(「とても好き」+「まあ好き」)の差は20.2ポイント、「地方・男子」と「地方・女子」のそれは16.5ポイントと、都市部と地方のどちらにおいても男子のほうが女子よりも「理科好き」である割合が高いことである。すなわち、居住地域の違いよりも、男子か女子かという性別の違いのほうが「理科好き」に与える影響が大きいということである。
図3-14 居住地域ごとに見た、「理科好き」な子どもの割合(男女別)
(理科が「とても好き」+「まあ好き」の合計)