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渡辺恵(明治学院大学非常勤講師)
近年、理科教育に対する関心が高まっている。2011年度から全面実施されている新学習指導要領では、理数教育の充実が改訂ポイントのひとつに掲げられている。具体的に言えば、子どもの科学的な思考力や表現力、科学への関心を深めていくことが目指されている。全国学力・学習調査では、2012年度から理科に関する調査が新たに加わり、理科の学力及び、理科に対する関心・意欲などの学習状況の把握・分析が行われるようになった。この背景には、知識のグローバル化に伴い「知識基盤社会」(新しい知識・情報・技術が社会のあらゆる領域における活動の基盤となる社会)の時代を迎え、次代の科学技術を担う人材の育成が重要な課題であるという認識が社会的に広まったことがあげられる。加えて、子どもたちの「理科離れ」と、その改善に向けた取り組みの必要性が盛んに語られていることも、理科教育への関心の高まりにつながっていると思われる。
こうした社会状況において、保護者は、理科への関心を育てることに対してどのように考えているのだろうか。家庭での教育は、子どもの関心事の形成や経験の蓄積に少なからず影響を与えていよう。とすれば、子どもの理科に対する関心を高めるには、学校教育のみならず、家庭での教育方針や取り組みにも目を向ける必要があろう。
ところで、昨今は、家庭における教育のスタイルが多様化している時代である。保護者がどのような教育方針をとり、どのような教育選択を行うのか、子どもに何を経験させようとするのか、そのスタイルは様々である。理科への関心を高めることに取り組むかどうかも、スタイルのひとつであると言える。このことを踏まえると、次のような課題が浮かびあがる。各家庭は、理科に関わる活動をどの程度取り組んでいるのであろうか。保護者は、子どもの理科的な活動に対してどのような構えでいるのだろうか。どのような特性を持つ家庭が理科的な活動経験を子どもに与えることに熱心なのだろうか。
本章では、家庭の教育方針や「文化的資源」(1)などの家庭の特性を踏まえつつ、理科的な活動経験を子どもに与えることに対する保護者の構えを検討していくことにする。