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遠藤宏美(宮崎大学特任助教)
はじめに、理科の好き嫌いに性差があるのかを確認しよう。図3-1は、子どもがどのくらい理科を好きか、その結果を男女別に示したものである。
男女とも「まあ好き」が最も多く、それぞれ約半数を占める。「とても好き」と合わせると男子が83.1%、女子が65.1%となり、小学6年生の多くは理科が好きであるといえる。ところが、「とても好き」に着目すると、女子(14.0%)は男子(28.0%)の2分の1にすぎない。また、「まったく好きではない」という明らかな「理科嫌い」はほぼ同じくらい(男子:2.3%、女子:3.7%)であるが、「あまり好きではない」割合は男子の13.0%に対して女子は29.8%と2倍以上になる。これらのことから、理科の好き嫌いには性別による差があり、男子のほうがより「理科が好き」である傾向が強いことが確認できる。
図3-1 子どもの「理科好き」の程度(男女別)
次に、「理科好き」な子はどのような性格・行動特性を持っているのかを探ってみよう。図3-2は、保護者が子どもに「あてはまる」(「よくあてはまる」と「まああてはまる」の合計)と回答した性格・行動特性の割合を、「理科好き」の程度別に示したものである。なお、図3-1の結果から、「まったく好きではない」と回答した人数がきわめて少なかったため、「あまり好きではない」と「まったく好きではない」を合わせて「好きではない」とした。また、「わからない」は分析から除外している。
この結果を見ると、理科を「とても好き」な子の8割以上が「やり始めたら集中して取り組む」、「好奇心旺盛」、「思いついたら、自分で試してみる」、「ものごとの仕組みを知りたがる」といった性格や行動特性を持っていることが見て取れる。加えて、理科が「好きではない」子よりも高い割合であることから、「理科好き」な子が持ち合わせやすい性格・行動特性であるといえる。すなわち「理科好き」には、何かに集中して取り組んだり、ものごとを追求することに興味・関心を持ち、行動を起こそうとしたりする子が多いことを示している。
このうち特に「ものごとの仕組みを知りたがる」は、「とても好き」(81.0%)と「まあ好き」(61.5%)の差が19.5ポイントと他のどの性格・行動特性よりも差が開いていることに加え、「まあ好き」と「好きではない」(33.9%)との差も27.6ポイントと大きいことから、理科が好きな程度が強いほど多く見られる行動特性であるといえそうである。
図3-2 「理科好き」の程度別に見た、子どもに見られる性格・行動特性
数値は、子どもにその性格・行動特性が「あてはまる」(「よくあてはまる」と「まああてはまる」の合計)と回答した割合を示す。
さて先ほど、「理科好き」には男女差があったことを確認したが、「理科好き」な子が持っている性格・行動特性にも男女による違いがあるのかどうかを探ってみよう。「理科好き」の程度と性格・行動特性との関係を、男女別に相関係数で表した(表3-1)。0.2を超えた項目(色つきのセル)は、弱いものの正の相関があることを示している。
なかでも、「ものごとの仕組みを知りたがる」は相関係数が男女とも0.3を超えて最も高く、しかも女子よりも男子の方が高い数値を示している。このことは、「理科好き」の程度が強いほどこの行動特性を持ち合わせており、特に男子にその傾向が強いことを示すものである。また、「思いついたら、自分で試してみる」や「じっくり考える」、「やり始めたら集中して取り組む」、「好奇心旺盛」についても、男子は女子よりも相関が高い。すなわち、これらは「理科好き」であるほど、男子が女子よりも持ち合わせやすい性格・行動特性であることがわかる。逆に、女子は「目標に向かって計画的に取り組む」で男子よりも相関が高く、これは「理科好き」が強いほど女子に見られる傾向がある性格・行動特性といえる。
表3-1 「理科好き」の程度と性格・行動特性の相関
(Spearmanの順位相関係数/男女別)
** 相関係数は 1% 水準で有意 (両側)
相関係数が0.2を超えるセルは黄色で、0.3を超えるセルはオレンジ色で示した。