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小学生白書Web版 2012年7月調査

第3章 どのような子どもが理科を好きになるのか

遠藤宏美(宮崎大学特任助教)

おわりに

本章では、子どもの「理科好き」を支える要因として、子ども自身の性格や行動特性と、生活環境や家族とのかかわりに着目し、調査結果を用いて検討を行ってきた。本章から得られる知見は次の5点である。①「理科好き」は男子に多く、女子よりも男子のほうが理科に対する親しみを持っている。②子どもの「理科好き」を支える性格・行動特性の背景には、「論理的・計画的」な資質と「好奇心旺盛・行動的」な資質とがある。③「理科好き」は「好奇心旺盛・行動的」な資質と、「学校の理科の成績」は「論理的・計画的」な資質と、より強く関係している。④住んでいる地域の特性と「理科好き」との関連は弱く、性別のほうが大きな影響を与えている。しかし女子の場合、ものづくりが盛んな地域であることや公民館や大学、図書館・博物館などが近くにある地域であることが、「理科好き」を育みやすいようである。⑤家庭内に子どもの理科的な興味・関心に理解を示す大人が(できれば複数)いることで、子どもの「理科好き」は育まれやすい。さらに、そのような興味・関心を保護者も共有し、サポートすることにより、「理科好き」はさらに強まると考えられる。

以上の知見から、子どもの「理科好き」を育むために2つのことを提言したい。ひとつは、子どもの興味や好奇心を大事にし、サポートすることである。この調査の結果からは、「理科好き」には、「好奇心旺盛」、「思いついたら、自分で試してみる」、「ものごとの仕組みを知りたがる」といった「好奇心旺盛・行動的」な資質がより関係していることがわかった。また、子どもが日常生活の中で理科的な興味・関心を抱いたとき、保護者がそれに関心を持ったりサポートをしたりする家庭では、「理科好き」な子が多い傾向も見られた。理科を「好き」になったり「好き」であり続けたりするためには、子どもが理科や科学へ興味・関心を抱いたり好奇心を持って行動することを、周囲の大人が支えることが重要である。

もうひとつは、女子の理科・科学への興味・関心や学習に対する支援を工夫・充実させることである。「はじめに」で触れたように、女子の「理科嫌い」は各所で指摘されており、本章でも女子の「理科好き」は男子に比べて明らかに少ない傾向が確認された。しかし、「理科好き」の資質である好奇心や論理的思考力が、とりわけ女子に備わっていないわけではないし、大学・公民館、図書館や博物館などの学習サポートが整っている地域に住む女子は「理科好き」が多い傾向にあった。今回の調査では女子の「理科好き」が男子に比べて少ない原因を探ることはできなかったため断言はできないが、理科や科学に関する情報にアクセスしやすい環境を整備したり、理科的な好奇心をさらに育むような講座等を用意したりすることによって、女子の「理科好き」を支えることができるのではないだろうか。

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