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渡辺恵(明治学院大学非常勤講師)
では、実際に、子どもが理科に対する興味・関心を示した際には、保護者は、どのような構えでそのことに対応しているのだろうか。図2-11は、「お子さんの理科的な興味や関心に付き合ったり、理解を示したりする大人の家族」の有無について尋ねた結果である。なお、ここでは、「これまで子どもが理科的なことに興味や関心を持ったことがない」と回答した68家族を除外して、集計している。
図2-11.子どもの理科的な興味・関心に付き合ったり、理解を示したりする大人の家族
「回答者及び他の家族」が理科に対する子どもの興味・関心に理解を示す傾向にある家庭は、26.6%である。「回答者のみ」が子どもの理科に関する興味や関心に付き合ったり、理解を示したりしている家庭は41.5%であり、「回答者以外の家族のみ」では26.0%である。反対に、子どもの理科的な興味・関心に付き合ったり理解を示したりする大人の家族がいない家庭は5.5%(57家庭)である。このような結果から、ほとんどの家庭では、家族の誰かしらが子どもの理科的な興味や関心に理解を示していることがわかる。さらに言えば、家族のなかでも、子育ての中心的な担い手である回答者が、理科に関する子どもの興味・関心に一番理解を示していることが窺える。なお、子どもの性別や出生順位による違いに着目すると、子どもの性別による違いはないようである。出生順位では、小学6年生の子どもが「第二子以上」である家庭では、「回答者及び他の家族」の割合がやや高く、家庭内に子どもの理科的な興味・関心に付き合う大人が複数いる傾向が窺える。
では、どのような家庭が子どもの理科的な興味・関心に付き合ったり、理解を示したりする傾向が強いのだろうか。まずは保護者の理系分野の専攻経験の有無や「文化的資源」から探ってみよう。
理系分野を専攻していた経験による影響はどうだろうか。調査では、高校教育以上を経験している保護者に、最終学歴で理系分野の専攻をしたかどうかを尋ねている。これをもとに、母親と父親が「共に理系分野専攻」だった家庭、母親か父親の「どちらかが理系分野専攻」だった家庭、母親と父親が「共に理系分野以外の専攻」だった家庭に分けて見た結果は図2-12に示す通りである。
保護者が「共に理系分野専攻」の場合、家族全体で、理科に対する子どもの興味・関心を受けとめ、対応している様子が窺える。「共に理系分野専攻」の家庭では、「どちらかが理系分野専攻」や「共に理系分野以外の専攻」に比べ、「回答者及び他の家族」の割合が約9~13ポイントほど高くなっている。それに対して、「どちらかが理系分野専攻」であった場合、理系分野を専攻していた保護者のみが子どもが抱いている理科への興味・関心に対応していると思われる。「回答者のみ」と「回答者以外の家族」の割合が36.6%と38.1%と同程度に高いことに加え、「共に理系分野専攻」や「共に理系分野以外の専攻」に比べ、「回答者以外の家族」の割合は18ポイントほど高くなっている。つまり、子どもが理科に関わることに興味や関心を持った際には、保護者のどちらか一方が子どもに付き合っているようである。また、保護者が「共に理系分野以外の専攻」であった場合では、「回答者のみ」の割合が44.1%と高くなっており、子どもの理科に関わる興味・関心には、家族のなかで子育てを中心的に担っている人が主に対応していると言えよう。
図2-12.保護者の理系分野専攻経験別、「文化的資源」別に見た子どもの理科的な興味・関心に対応する大人の家族
「文化的資源」は、どのようにかかわっているのだろうか。「文化的資源」の多さは、保護者が経験・保有している文化的教養の量的・質的な豊かさを示している。この点で、「文化的資源」は、子どもの理科的な興味・関心に応えるために動員できる資源になりうると思われる。理科的な興味・関心に対応する際、こうした資源の豊富さは、どのような対応をもたらすのだろうか。
図2-12の下図の通り、「文化的資源」の多群では、「回答者及び他の家族」が、もっとも理科的な興味・関心を受けとめ、対応しているようである。「文化的資源」が少なくなるにつれ、複数の家族が子どもの理科的な興味・関心に対応することは大幅に減っている。中群や少群では、「回答者のみ」あるいは「回答者以外の家族」の割合が増えている。このことから、文化的教養が家庭内に豊富に保有されていることが、家族全体からの協力・支援を引き出す鍵となっていると言えよう。