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渡辺恵(明治学院大学非常勤講師)
家庭における教育方針の違いは、理科教育に対する構えに影響を与えているのではないだろうか。「学習関与志向」と「多様な活動経験重視志向」の2つの教育方針からみた結果は、図2-13の通りである。
図2-13.教育方針から見た子どもの理科的な興味・関心に対応する大人の家族
図2-13の教育方針別にみていくと、「学習関与志向」の強群や「多様な活動経験重視志向」の高群では、中群や弱群に比べ「回答者及び他の家族」の割合が増えていることがわかる。ただし、どちらの教育方針も「回答者のみ」の割合が高く、「文化的資源」の高群ほどには、子どもの理科的な興味・関心を受けとめが家族ぐるみで行われているわけではないようである。
もうひとつ、この図2-13において着目すべきは、「学習関与志向」の弱群の家庭であろう。教育方針において「学習関与志向」が弱い家庭(弱群)では、「家族にはいない」の割合が1割を超えており、中群・強群に比べ、多くなっている。この数値は、「多様な活動経験重視志向」や「文化的資源」別にみた中でも、もっとも高い数値になっている。また、子育てを主に担っている回答者が理解を示したり、受けとめたりする割合も、中群・強群に比べ低く、「回答者以外の家族」が対応している割合が多くなっている。これらの点を踏まえると、「学習関与志向」が弱い家庭では、子どもが理科や科学に関心を持ったとしても、その関心を伸ばす支援を家族から受けることが難しい状況におかれる傾向が窺える。
このように、子どもが理科に関わる興味・関心を示した際に、家族が理解を示したり、一緒に付き合ったりするかどうかは、家庭の状況に左右されることがわかった。理科的な活動に関しては、理系分野での専門教育を受けた経験や「文化的資源」の豊富さが子どもの理科的な関心への熱心な対応を支えている、という先の結果に見て取れたように、理科に関わる専門的な知識や物的なものがある程度必要とされると言えよう。そのため、保護者に、子どもの興味・関心を受けとめたいという思いはあったとしても、実質的には、家庭の様々な事情により十分には対応できないことも多々あろう。この点は、家族のみが子どもの理科的な興味・関心に対応することの限界とも言えよう。