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角替弘規(桐蔭横浜大学教授)
これまでは教科としての理科が好きかどうかについて検討してみたが、日頃の理科的な活動についてはどうであろうか。先に設定した「理科活動得点」について父親の職業ごとに比較してみよう。
先ほどと同じく6つの職業について、「理科活動得点」の高群の割合を比較したものが表1-4である。
表1-4 父親の職業別に見た子どもの「理科活動得点」高群の割合
第1節では、理科活動得点が高いことと「理科好き」ことは強く相関があると説明をした。それに従うならば、「理科好き」が多かった「生産工程・運輸従事者」の家庭の子どもに占める理科活動得点の高い子の割合は大きくなると予測していたが、この比較においてはどうもそうではないようである。
ここで比較した6つの職業の中では父親が「専門技術系職員」である家庭において理科活動得点の高い子どもの割合が最も高くなっていた。これは他の職業と比べて非常に大きい値となっている。また、表1-4で比較した職業以外で見てみると、「熟練工・整備工などの技能工」(N=24)で45.8%、「パートタイマー・アルバイト・臨時職員など」(N=25)で52.0%などという値が見られた。ただしこれらの職業に就いては母数が小さいので単純な比較は難しい。
このように見てみると、子どもの理科好きや理科に関する日常の活動の在り方と父親の職業との関連は、全くないとは言い切れないものの、逆に特定の職業と特に強い関係があるとは言えそうにない。敢えて言うならば、父親が専門技術系の仕事に就いている場合、子どもが理科的な活動を行うことに積極的な意識を持っていると指摘できるだろう。
それでは、父親の職業と子どもの理科の成績との間には何か関連がみられるのだろうか。これまでと同様6つの職業ごとに、子どもの理科の成績が「良い」と回答したケースの割合をまとめたものが表1-5である。
表1-5 父親の職業別に見た「理科の成績」が良い子どもの割合
*「とても良い」と「まあ良い」の割合の合計
父親の職業別にみる前に、全体の傾向を把握しておくと、保護者の目から見て子どもの理科の成績が「良い」と回答しているのは全体の8割以上にのぼる。これは「理科好き」に関する回答と同様である。他の調査から見ても、小学生は全体的な傾向として理科が好きであると指摘されていることから、これはそれほどおかしな結果ではないと言えるのではないだろうか。
では全体的に理科の成績が「良い」という傾向の中で、父親の職業別にはどのような違いが見られるのだろうか。「とても良い」と「まあ良い」を合計した割合で比較してみると、「管理職以上」、「専門技術系職員」、「自営業」において全体よりも高い割合で「成績が良い」子どもが多くなっている。逆に「生産工程・運輸従事者」、「その他(正社員・正職員)」で「成績が良い」子どもの割合は少なくなっている傾向が見受けられた。
これをもう少し細かく見ていきたい。理科の成績が「とても良い」と回答した人の割合を父親の職業別に比較すると、「管理職以上」、「専門技術系職員」においては「とても良い」と回答している人の割合が他よりも多くなっていることが分かる。その一方で、「成績が良い」とされた割合が非常に高かった「自営業」では「とても良い」と回答している人の割合は他の職業よりも少ないことが分かる。
以上のことから、父親の職業別に見た場合、「専門技術系職員」の家庭において理科の成績が良い子どもの割合が高くなる傾向があるようだと言えそうである。ただ、これまでと同様、父親がこの職業だから必ず子どもの理科の成績が良い、とは断言できない。親の職業にかかわらず、全体的には理科の成績は良いと判断されている傾向にあることを念頭に、僅かながら親の職業の影響があるかもしれない、という指摘にとどめておきたい。