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渡辺恵(明治学院大学非常勤講師)
それでは、どのような家庭が日常生活に関わるしつけを重視する傾向があるのだろうか。この点を、母親の就業形態(2)や教育経験の2点から確認しておこう。就業形態は、子どもに関わる時間や家事分担に対する考え方に違いがでてくると思われる。教育経験は、保護者自身の経験にもとづき、学校生活をどのように捉えるかが変わってくると思われる。なお、母親に限定するのは、しつけに対する家庭の方針は、主に育児をしている人の考えを反映しやすいと考えるためである。今回の調査では、家族の中で小学6年生の子どもの育児を主にしている人の約9割が母親であった。
表2-1は、母親の就業形態と最終学歴別にみた、しつけの方針を示している。なお、就業形態が「自営業・自由業(家業手伝い含む)」の数値に関しては、該当する母数が少ないため、結果を読み取る際には注意が必要である。
表2-1.母親の就業形態、最終学歴別に見た、しつけ方針(単位:%)
*「とてもあてはまる」または「まああてはまる」に回答があった割合
母親の就業形態別に見たときに、次のような特徴が見受けられる。母親が勤めに出ている家庭では、家事手伝いに関するしつけを重視する傾向が強いことである。母親が「正規雇用」で勤めている家庭では、「普段から子どもに家事を手伝わせるようにしている」割合が87.7%、「非正規雇用」では83.6%と、母親が「無職」である家庭に比べ、約10~14ポイントほど高くなっている。参考までに言えば、「自分のことは自分でするようにしている」の項目では、「あてはまる」の合計では差はほとんどみられないが、「とてもあてはまる」の割合に着目すると、「正規雇用」では44.3%であり「非正規雇用」では43.6%であり、母親が「無職」である家庭よりも5~6ポイントほどやはり高くなっている。このことから、母親が働きに出て家を留守にする家庭ほど、家事能力や自分のことは自分で行う力を身につけさせるといった、家庭生活を自立的に行えるように働きかけることを重視していると指摘できよう。
母親の最終学歴別(表2-1参照)に着目すると、次のような特徴が窺える。ひとつは、母親が「専門学校・各種学校」の教育経験を持っている家庭である。母親の最終学歴が「専門学校・各種学校」である家庭では、「普段から子どもに家事を手伝わせる」ことを心がけている割合が83.7%であり、唯一8割を超えている。また、「自分のことは自分でするようにさせている」の項目では96.3%の家庭が心がけており、他の家庭に比べ若干高くなっている。このように、この家庭では、家事能力を身につけさせることが重視されている。言い換えれば、保護者は、家庭生活に関わる自立を子どもに促すことに力を入れているのではないだろうか。
もうひとつは、母親が大学や短期大学での教育経験を有している家庭である。母親が「短期大学・高等専門学校」や「大学・大学院」を卒業した家庭では、「基本的な生活習慣を厳しくしつける」ことがもっとも重視されており、「専門学校・各種学校」や「中学・高校」までの教育経験をもつ母親の家庭に比べ、その割合は8~9ポイントほど高くなっている。基本的な生活習慣の習得は、学校生活への適応にも深く関わっている。その点で、母親が短大・大学での教育を受けている家庭では、「基本的な生活習慣」に関わるしつけを行い、学校生活への適応力を高めることに、より、力を入れていると見ることもできよう。