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TOP > 小学生白書Web版 > 2010年9月調査 > 序章 学校での「学び」を考える ~今どきの「勉強ができる子」とは?~
石井久雄(明治学院大学准教授)
子どもたちの「学び」をめぐる状況に目を向けてみましょう。
悉皆調査から抽出調査に2010年度より変更されたとはいえ、文部科学省が行う「全国学力・学習状況調査」は4回目が終わり、子どもたちの間に着実に浸透しつつあります。
また、2010年6月に、多くの自治体で「子ども手当」が支給され、その使い道の一つとして、学習塾や通信教育といった学校外教育への費用が挙がっています。「子ども手当」に関する内閣府の調査によると、家庭の年収によって学校外教育費への支出の意識が異なることが判明し、「教育格差」を助長する可能性があるのではないかと指摘されています*1。
さらに、「基礎的・基本的な知識・技能の習得」、「思考力・判断力・表現力等の育成」、「学習意欲の向上や学習習慣の確立」等をキーワードとした新学習指導要領が、2011年度(平成23年度)から小学校で全面実施されます。「確かな学力」の確立を目指す動きが、小学校で本格化していきます。
このように、子どもの「学び」をめぐる状況は、大きな変化をむかえつつあります。
そうした状況をふまえ、今回の調査では、小学生たちの学校生活、とりわけ「学び」に注目し、その実態を明らかにすることを目的としました。
具体的には、第1に、子どもたちは、学校でどのようなときに楽しいと思い、どのような先生が好きで、そして学校での勉強をどのように受けとめているのか。こうした学校生活全般の意識を分析します(第1章)。
第2に、学校生活と密接な関係にあるのが家庭生活です。子どもたちは、何時に起きて、どんな遊びをして、どれくらい勉強をするのか。そんな家庭での様子を中心に、自分のことや未来のことを含め、日常生活全般の意識等を明らかにします(第2章)。
第3に、学校での学びが変化しつつあるなか、今どきの「勉強ができる子」は、どのような授業を好み、どのような学び方を得意としているのでしょうか。「勉強ができる子」の学校での取り組みの内実を解明し、そのことを通して、学校での「学び」の意味を考えていきます(第3章)。
第4に、家庭教育への意識の高まりを背景としながら、「勉強ができる子」のあり様が、変わりつつあります。今どきの「勉強ができる子」は、どんな子どもなのか。家庭学習、自己意識、将来像の側面から、その特徴を探っていきます(第4章)。
果たして、小学生たちは、学校でどのような姿を示しているのでしょうか。その姿の一端を、次章以降で探っていきます。
<注>*1「インターネットによる子育て費用に関する調査報告書」(内閣府2010年3月発表)及び、2010年4月30日付産経ニュースより。