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TOP > 小学生白書Web版 > 2010年9月調査 > 第4章 「勉強ができる子」の今どきの姿
渡辺恵(明治学院大学非常勤講師)
就きたい職業に関してはどうであろうか。男女別・「習熟度」3グループ別にみた、将来就きたい職業の上位3つは表4-1に示すとおりである。
表4-1.「習熟度」3グループ別にみた将来就きたい職業(上位3つ)
男子の将来就きたい職業の第3位までをみると、「プロ野球選手」や「プロサッカー選手」などスポーツ選手がどのグループでも上位を占めていることがわかる。この点で、勉強が得意かどうかに関わらず、男子は将来の職業に対してだいたい同じような像を描いているといえよう。ただ、上位グループが他のグループとの多少異なっているのは、第3位に「大学教授・研究者」(7.6%)が入っている点である。下位グループでは、「大学教授・研究者」は第5位(3.3%)である。これは、「勉強が得意な子ども」の方が知識を得ることや探求することの楽しさを知っているためではないだろうか。
女子では、「ケーキ屋・パティシエ」が、どのグループでも人気のある職業のようである。それ以外の職業に関しては、「習熟度」により異なる傾向がうかがえる。上位グループでは、就きたい職業として第2位に「医師」(11.8%)、第3位に「獣医や動物の飼育員や訓練士」(8.5%)が入ってきている*注4。「医師」は、中位グループでは第9位(2.8%)、下位グループでは選択されていない。「獣医・動物の飼育員・訓練士」は、中位グループでは第10位(2.3%)、下位グループでは第6位(2.1%)である。反対に、中位や下位グループでは、「幼稚園の先生・保育士」や「看護師」が就きたい職業ランキングの第3位までに入っている。これらの職業は、上位グループでは、それぞれ第6位(4.4%)と第8位(1.5%)である。このように、女子では、「勉強が得意な子ども」の方がより高い学歴を必要とする職業を希望する傾向にあるといえよう。
以上のように、「勉強が得意な子ども」の将来像をみてきた。ここから、「勉強が得意な子ども」が描いている将来像に関しては2つのタイプが浮かび上がる。1つは、より高度な知識や技術、資格を必要とする職業に関心があり、その職に就くことに向けて、大学以上の進学を目指しているタイプである。つまり、将来設計をしっかりと立てているタイプである。2つめは、進学希望では大学以上の進学を目指すという明確な進学ビジョンを持っているが、就きたい職業に関しては、スポーツ選手やケーキ屋・パティシエといったあこがれの要素が強い職業を選択するタイプである。職業と進学希望が必ずしも結びつかず、とりあえず高学歴の取得を目指すタイプであるといえよう。
最後に、これまでの結果を踏まえ、今どきの「勉強ができる子」の姿を描いておこう。1つは、家庭における学習の姿勢から鑑みると、ひとりでコツコツと学習する習慣を身につけている姿である。2つめは、勉強だけではなく、プラスαで他の得意なことを持っているためか、総じて自分自身に対する評価が高い姿である。3つめは、高学歴を目指す姿である。1つめと3つめの特徴である将来を見据えて勉強を重視する姿は、昔ながらの「勉強ができる子」像であるいえよう。しかし、2つめの姿は、「勉強ができる子」の新たな面の表れではなかろうか。勉強のみに突出した力を持つのではなく、勉強に加え、他にも得意なことをいくつか持ち、多方面に力を伸ばしつつある姿。これこそがこれまでにない「勉強ができる子」の特徴と思われる。
<注>