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TOP > 小学生白書Web版>第3章 これからの学校での「学び」はどうなるか? ~「習熟度」3グループの比較をもとに~
石井久雄(明治学院大学准教授)
「勉強が得意な子」と「勉強が苦手な子」は、授業スタイルの好き嫌いに、どのような違いがあるのであろうか。
まず、「くり返してやることで大事なことがしっかり覚えられる授業」と「色々な話で興味や関心が広げられる授業」のどちらの授業スタイルが好きかを訊いてみた(図3-6参照)。「くり返してやることで大事なことがしっかり覚えられる授業」では、「習熟度」上位グループよりも「習熟度」下位グループの方が、好きであると答える者が多かった(上位G:17.7%→中位G:24.5%→下位G:26.6%)。「色々な話で興味や関心が広げられる授業」では、「習熟度」下位グループよりも「習熟度」上位グループの方が、好きであると答える者が多かった(下位G:73.4%→中位G:75.5%→上位 G:82.3%)。「勉強が苦手な子」は、基礎基本を反復して教えてもらい、その内容をきちんと定着させてもらえるような授業が好きであるといえる。「勉強が得意な子」は、発展的な内容を取り上げてくれて、知的好奇心をくすぐってくれる授業が好きであるといえる。
図3-6.「習熟度」3グループ別にみた「好きな授業スタイル」(1)
また、図3-7は、習熟度別に「ひとつひとつ細かく丁寧に指示してくれる授業」と「どうしたら良いのかを自分で考えさせてくれる授業」のどちらが好きかを示したものである。「習熟度」下位グループは、「習熟度」上位グループよりも、「ひとつひとつ細かく丁寧に指示してくれる授業」を好む割合が高い(上位 G:50.3%→中位G:65.7%→下位G:77.1%)。「習熟度」上位グループは、「習熟度」下位グループよりも、「どうしたら良いのかを自分で考えさせてくれる授業」を好む割合が高い(下位G:22.9%→中位G:34.3%→上位G:49.7%)。「勉強が苦手な子」は、手取り足取りきめ細かく指導してもらえる授業を期待している。「勉強が得意な子」は、ある程度任せてもらって自分のやりたいようにやらせてもらえる授業を期待している。
図3-7.「習熟度」3グループ別にみた「好きな授業スタイル」(2)
さらに、「自分の苦手な所を克服させてくれる授業」と「自分の良い所をさらに伸ばしてくれる授業」のどちらの授業スタイルが好きかを訊いてみた(図3-8参照)。「自分の苦手な所を克服させてくれる授業」では、「習熟度」上位グループよりも「習熟度」下位グループの方が、好きであると答える者が多かった(上位G:24.5%→中位G:28.4%→下位G:34.9%)。「自分の良い所をさらに伸ばしてくれる授業」では、「習熟度」下位グループよりも「習熟度」上位グループの方が、好きであると答える者が多かった(下位G:65.1%→中位G:71.6%→上位G:75.5%)。「勉強が苦手な子」は、つまずいている部分を解消させてくれる授業を求めている。「勉強が得意な子」は、長所を伸長させてくれる授業を求めている。
図3-8.「習熟度」3グループ別にみた「好きな授業スタイル」(3)
このように、「勉強が苦手な子」は、重要ポイントを徹底的に教えてくれて、やるべきことを一つ一つきめ細かく指示してもらいながら、分からない所をなくしてくれるスタイルの授業を好んでいることが明らかになった。また、「勉強が得意な子」は、応用的な部分を多く取り上げ、視野を広げてくれて、子どもの自主性を重んじ、自分が得意とすることをどんどんやらせてくれるスタイルの授業を好んでいることが明らかになった。