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TOP > 小学生白書Web版 > 2010年9月調査 > 第2章 小学生の日常生活についての意識と実態
遠藤宏美(明治学院大学非常勤講師)
将来、どの学校段階まで進みたいと思っているのかを尋ねた結果が、図2‐16である。
全体を見ると、大学をはじめとする高等教育機関(専門学校、短期大学、大学院を含む)への進学を希望する割合が半数を超えており(計55.2%)、高校までを希望する子の割合を大幅に上回っている(「中学校まで」:0.6%、「高校まで」:11.2%)。
男女別に見ても「大学」までの進学を希望している割合が最も高く、男女とも4割を超えている(男子:47.0%、女子:41.8%)。なお、「短期大学」への進学希望のほとんどは女子(男子:0.2%、女子:5.5%)であったが、多くの短期大学が女子のみを対象としていることからも、この結果は当然のことであるといえよう。男子は女子に比べて「大学院」への進学希望が多く(男子:4.2%>女子:1.7%)、より高学歴を求めているといえそうであるが、一方で「高校」まで(「中学校」を含む)の進学を望む割合も男子に多く(男子:13.6%>女子:9.8%)、男子が必ずしも高学歴を望んでいるというわけではないだろう。
図2-16.将来進みたい学校
学年別に見てみると、学年が上がるにつれて「大学」と「専門学校」への進学希望が増加していることがわかる。また、「わからない」と回答した子どもの割合は学年を追うごとに減少し、6年生では2割をきっている(17.5%)。学年が上がると、将来の希望が次第に明確化していくのだろうと想像がつくが、とはいえ、高校を卒業するのは早くても6年も先のことである。子どもたちはずいぶんと早いうちから将来進みたい学校を考えているものだと驚かされる。しかし先に見たように、塾へ通っている子どもが多いことからも、受験や将来の進路を考えたり、家族で将来のことを話し合ったりする機会が多いのではないかと推察される。
以上、現代の小学生の日常生活、特に、学校から家に帰ってきた後の時間の過ごし方と、今の自分のとらえ方や将来の希望などを、アンケートの結果を用いて探ってきた。ここから今の子どもたちについて、次のようなことが指摘できる。
第一に、1~3年生の低学年と、4~6年生の高学年では生活スタイルが異なることである。6年も年齢が離れているのであるから当然ではあるのだが、1~3年生は早寝早起きでよく遊び、遊びの種類も豊富である。かたや4~6年生は起床・就寝時刻とも遅くなっていき、学校から帰ったら塾に通う子も増えている。それと並行して勉強時間も長くなる一方で、遊ぶ時間は減少し、主な遊びも電子ゲームに収斂していく。子どもたちの生活を考えるとき、「小学生の子ども」としてひとくくりに論じることはできないことをあらためて感じさせる結果であった。
第二に、小学生といえども、子どもたちは家庭や地域を通じて社会とつながっているため、その生活には社会の状況が反映されていることである。学校のほかに塾に通って勉強をする子も少なくなかったが、背景には大学等の高等教育機関へ進学し、高い学歴を得ることが望まれている社会があり、子どもたちは小学生の段階ですでにそのような進学希望を持っていることもわかった。とはいえ、将来希望する仕事は、現実の大人社会における職業を反映したものにはなっておらず、子どもたちの憧れや夢はまだ大事にされていることがうかがえる。
なお、このような将来の職業の希望や遊び、自分の得意なことなどでは、男子と女子との間に差が見られ、男の子らしい/女の子らしい遊びや仕事という考えが、小学生の段階ですでにしっかりと身についていることを感じさせる結果であった。このような考えも社会における性別とそれに伴う男性らしさ/女性らしさを反映したものであるといえよう。
「子ども」は、大人とは異なる存在であるとして扱われてきたが、実のところは大人の社会の状況を色濃く反映した「鏡」であるといえるだろう。いまや私たち大人は、子どもたちの日常生活の実態から、自分たちの生活や社会を省みることが必要とされているのかもしれない。