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TOP > 小学生白書Web版 > 2010年9月調査 > 序章 学校での「学び」を考える ~今どきの「勉強ができる子」とは?~
渡辺恵(明治学院大学非常勤講師)
では、小学生はどのような勉強が得意なのだろうか。新しい学習指導要領では、「思考力・判断力・表現力等の育成」が教育方針として掲げられている。
そこで、昨今の小学生の得意な学習の実態を把握するために、次の5つについて得意か苦手かを尋ねた。
それらは、
である。
図1-12.得意な勉強(全体・性別)
なお、図1-12 と図1-13 は、「得意」と「どちらかといえば得意」と回答した児童の合計の割合を示したものである。
図1-13.得意な勉強(学年別)
その結果、小学生全体では、「ものを覚えること」は、7割近くの児童が得意であった。
「わからないことや知らないことを調べること」や「他の人が思いつかないアイディアを出すこと」は約半分の児童が得意であると回答している。
それに対して、「難しい問題をじっくりと考えること」や「自分の考えを文章にまとめること」を得意であると回答する児童は3分の1以下であった。
このことから、暗記することは得意のようであるが、ものごとを熟考したり、表現したりすることはどちらかといえば苦手としていることがうかがえる。
この点は学年別(図1-13)にみても、同様の傾向が見受けられる。「ものを覚えること」は67%前後で推移しており、一貫してもっとも得意な勉強のようである。
反対に、「難しい問題をじっくり考えること」はどの学年でも得意である割合が25%前後であり、「自分の考えを文章にまとめること」も30%前後である。つまり、熟考することや表現することは一貫して苦手のままである。
「ものを覚えること」に関しては、大半の子どもにとって小さい頃から慣れた学び方であるため、苦に思わないのではないだろうか。また、授業内だけではなく、友だち同士でもどれだけ覚えたかをゲーム感覚で競い合いながら行われる学びでもあるので、小学生は暗記する学びに楽しさを感じていると考えられる。
それに対して、「難しい問題をじっくりと考えること」や「自分の考えを文章にまとめること」は、論理的に思考することが求められると共に、時間もかかる。学校生活だけではなく、家庭においても絶えず時間に追われ、迅速に何事も行うことが求められる昨今において、児童は時間をかけてじっくりと取り組んだり、考えたりすることに不慣れであると推察される。加えて、問いに対する正解をすぐに求め、考える習慣をつけていない児童にとって、論理的な思考が求められるような学びは困難に感じるであろう。
新しい学習指導要領のなかで指摘されているように、やはり思考したり、表現したりすることは、昨今の小学生の学びにおける課題といえよう。
性別による差異に着目すると、女子は男子に比べ、「自分の考えを文章にまとめること」(女子:37.5%、男子:24.0%)を得意としていることがわかる。一方で、女子にとって男子よりも不得意な勉強は「問題をはやく解くこと」(男子:50.0%、女子:39.2%)や「難しい問題をじっくりと考えること」(男子:28.5%、女子:20.0%)である。つまり、男子に比べ、女子は自らの考えを表現する学びは得意であるが、問題を解く学びは苦手なようである。
先の好きな科目と関連づけて考えると、表現することが得意な女子は国語が好きであり、問題を解くことが得意な男子は算数が好きであることがわかる。つまり、児童は、得意な学びが活かせる授業科目を好きになる傾向にあると推測される。