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TOP > 小学生白書Web版 > 2010年9月調査 > 第4章 「勉強ができる子」の今どきの姿
渡辺恵(明治学院大学非常勤講師)
「勉強が得意な子ども」は、勉強以外のことに関して、自分自身をどのように捉えているのであろうか。この点を、自分自身に対する肯定感の有無と、勉強以外の得意なことから検討していくことにする。
図4-4.「習熟度」3グループ別にみた「今の自分が好きか」
自己肯定感に関してみていくと(図4-4参照)、「習熟度」上位グループでは、「今の自分が好きですか」という質問に対して「とても好き」であると回答した子どもが29.3%であり、「まあ好き」は66.0%である。「勉強が得意な子ども」の自己肯定感が高いことがうかがえる。中位や下位グループにおける「とても好き」の回答が13.5%や9.2%であることと比べてみると、「勉強が得意な子ども」の自分自身に対する強い自信が表れているといえよう。
このことから、学校での勉強ができること自体が自分自身に対する評価を肯定的なものにしていると思われる。
では、「勉強が得意な子ども」は勉強以外で得意なものとして認識していることはどのようなものであろうか。「習熟度」上位グループの子どもが得意としていることの上位3つは、「絵を描いたり、ものをつくったりすること」(52.4%)、「体を動かしたり、スポーツをしたりすること」(46.9%)、「誰とでも友だちになれること」(42.2%)である。このように、「勉強が得意な子ども」は、勉強以外にも何かしら得意なことを持っていることがうかがえる。
次に、「習熟度」3グループ別に比較してみていこう(図4-5参照)。
図4-5.「習熟度」3グループ別にみた勉強以外での得意なこと
「習熟度」3グループ別に比較すると、中位、下位グループに比べ、上位グループでは、「誰ともでも友だちになれること」(上位グループ:42.2%、中位グループ:32.4%、下位グループ:27.5%)をあげる子どもが多いことがわかる。つまり、「勉強が得意な子ども」の方が、自分はそつなく人間関係をつくることができると感じているようである。
また、下位グループと比べると、上位グループの子どもは、「絵を描いたり、ものをつくったりすること」(上位グループ:52.4%、下位グループ:45.0%)や「歌を歌ったり、楽器を演奏したりすること」(上位グループ:40.8%、下位グループ:30.3%)が得意な傾向が見受けられる。「勉強が得意な子ども」は、芸術系の活動に関しても得意であると認識しているようである。
こうした結果から、「勉強が得意な子ども」の像として浮かび上がってくるのは、勉強だけではなく、人との関わりや芸術系の活動にも自信を持っている姿である。一昔前の「勉強ができる子」のイメージは、勉強はできるがそれ以外は苦手であるというものであった。しかし、今回の結果から見て取れるように、勉強だけではなく、プラスαで他の得意なことも持つようになってきている。つまり、「勉強ができる子」像は少し変わってきていると考えられる。
この背景には、昨今の家庭における教育事情が関わってきているのではなかろうか。保護者は、幼児期の段階から、学習面だけではなく、スポーツ系や芸術系のお稽古ごとに通わせ、多方面にわたり子どもの資質・能力を伸ばすことを心がける傾向にあると言われている(濱名2000、本田2008)。その結果、勉強のみに限定されず、それ以外にも得意なものを複数持つ子どもが増えてきているのではないだろうか。